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パスト ライブス/再会のVisorRobotのネタバレレビュー・内容・結末

パスト ライブス/再会(2023年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

TOHOシネマズ仙台で見た。夜の回。※レイトショーではない

予告編を見て凡庸そうなテーマだなと思いつつ、ラブロマンスは好きだし、アカデミー賞に絡んでるし、宇野維正もMovieDriverで「これはだれでも結構面白いと思う」っていってたし……。
と悩み、嫁はんと足を運んだ。

結果、とてもよくできた映画だということはわかる。ただ、後半はあんまり集中できなかった。それは俺が恋愛と人間の感情の機微にあんまり興味がなくてとにかく派手なジャンプショットとか音楽とかがないと退屈しちゃう側の人間だから。

そんなやつがラブロマンス好きというのも変な話だが、要するに俺が好きなのは『ララランド』とかああいう批評家受けの悪いなんか表層的なやつである。じっくりと登場人物の心中や人生に思いをはせるのが苦手なのだ!だってあいつら、本当はいないんだもん。俺の人生の方が大事だよ。

なんていったらすべての物語の否定になってしまうのだが。

そんな俺だが、入り込まない分客観的に話の出来不出来を見る力にはたけているのではないかと自負している。そして、話というか、映画としてよくできていたと思う。

言ってしまえば秒速5センチメートルみたいなちょっとした勇気のなさやタイミングのずれで永久に失ってしまった青春のアレを追想するタイプのエモい感情をどでかく動かす話なのだが、『One more time, One more chance』を俺でもわかるくらいくどくごてごてと厚塗りしていた秒速に対し、本作は最後まで大人な物語で、上品である。

泣き虫だったナヨンが、NYでノラとなり、24年の時を経て初恋の相手と別れ、現夫であるアーサーの前で「泣き虫のノラ」となる。アイデンティティと初恋の両方で、とうとう後戻りのできない次のステージに進んでしまったことを、嘆きながら祝福するという物語でしか描けない感情の帰結。

実に美しい。
ただ、そんな物語の主人公ではないからな、俺は。

そんな美しい人生もひょんな事故や発想や出会いで大きく変貌してしまうという方にカタルシスを感じるのだ。

あと、正直言ってノラがあんまり魅力的に感じなかった。これは見た目の好みもある。24歳のとき、全然36歳に見えた。そこは髪を染めるなりして区別してほしかった。一瞬映ったヘソンの今の彼女の方がよっぽど魅力的に見えた。まあ、そこは好みの問題だが、、、、。

人格的にもノラは大言壮語をはいていて、戯曲家として一応の夢をかなえたということはわかるんだけど、それ以上の魅力が伝わってこないんだよな。なんかもっと、こいつは何年たっても忘れられないだろうな、というわかりやすい出来事があれば。ようするに、『からかい上手の高木さん』がノラだったら、そりゃ西片も24年おもいつづけちゃうけど…というか。

とはいえ、そういうわかりやすいキャラクターじゃなくて普通の、当人たちにしかわからないイニョン<縁>があるというのが本作のテーマだからなー。絶対に意図的なんだけども。。。

やっぱ恋愛しない族にはようわからん。


あと、嫁はんと終わってから盛り上がったのは、やっぱり欧米目線で見たいアジア人の映画になってないかということだ。セリーヌ・ソン監督自身の物語だからリアリティがないなんて言っても仕方ないんだけど、成績優秀な男があんなに「Nice to meet you」下手なことあるかね。韓国は残業代もらえないってほんとかね。わざわざアメリカに来てパスタが食いたいかね。

それもこれも自信喪失したヘソンのキャラクターを表しているのかもしれんが、結局ヘソンにも魅力がないという話になる。

魅力がない2人のイニョンを描いたから、魅力的ではないが、大勢に響く物語となったのかもしれない。俺はもっと魅力的な映画が見たい。でも、そんなんnot for meってだけだというのはわかる。

アニメとかならもっと魅力的に「なってしまう」のだろうな。
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