もし、何かが違っていたら。あの時会いに行っていたら。
最近見た公開作の中で見た後の余韻がダントツにすごい。物凄く良かった。見てからずっと心の深いところを支配されているような、ぎゅっと締め付けられているような、さまざまな感情が去来する。
ヘソンが中国語ではなく英語を選んでいたら。ノラがソウルに来ていたら。おそらくあの2人には違う未来があったのだろう。もしそうなっていたら、この映画はおそらく普通のロマンス映画になっていたと思う。でもそうはならなかった。「会いたい」という恋情で引き合いながらも、お互い生きていくために現実を捨てられることができなかった。
見ている側は「早く行っちゃえよ！」と思うんだけど、でも現実ってそうだよな。授業があったり、仕事があったり、生活があったり、お金がなかったり、グリーンカードが必要だったり。それらをなげうって好きな人の元へ会いに行くのはなかなか難しいし、人生はそうやって進んでいく。
それにしてもジョンマガロが素晴らしかった。存在が優しい。妻の初恋の男が現れたことに不安を感じつつ、独占欲や嫉妬心などではなく優しさと相手への尊重でもってそっと寄り添うアーサー。ノラは良い人と結婚したな、と心の底から思う。だからこそ余計に苦しい。
ラストシーンが本当に良かった。ずっと堪えていたものが最後の最後にどうしようもなく溢れ出す。ノラと一緒に泣いてしまった。
