るか

パスト ライブス/再会のるかのレビュー・感想・評価

パスト ライブス/再会(2023年製作の映画)
2.8
アメリカの行き過ぎたカップル至上主義と僕の苦手な韓国系フェミニズムが織り成す"Not For Me"映画。
さすがA24また新たなセリーヌ・ソン監督という素晴らしいクリエーターを持ってきた。映像の力を信じている監督であることはユダヤ系の旦那の性格の描き方からも見て取れる。A24作品らしいどこかフィルムのような淡い質感の映像であり、下手に寄りを多用せずむしろ引きの画が多めの客観的で落ち着いたリアリスティックな作りになっている。クチコミで広がるのも納得のしっかりとした底力を持った作品と言えるだろう。
だが、脚本は納得いかない。まず自分は前半は非常に気に入っていた。正直マイベスト級になるポテンシャルを秘めていた。自分の出身であるNY。男女の描き方。非常に好きだった。だが、この時点で自分の中のこの作品の行く末は2つに1つであった。ひとつはヒロインが自称するように「男1人よりも稽古が大事」になってしまい、24年経って取り返しのつかないすれ違いになってしまった、というパターン。または、そうは言っても彼のことが忘れられず実際に会ってみたらやはり好きで今の旦那を捨てて一緒に韓国に戻るというパターン。だが、今作はそのどちらでもない実に中途半端で子供じみた他人任せの結論に辿り着く。それが良さなのだと言われればそうかもしれないが、個人的には自分のわがままを「イニョン」とかいう都合が良い言葉のせいにしてるだけにしか聞こえなかった。思想の問題なのかもしれないが、自分の人生なんだから自分で切り開くべきだろうと思ってしまう。現世は現世しかないんだから。
バーでのシーケンスではそれを切実に思った。まるで旦那はいないかのように文字通り蚊帳の外。スクリーンに映るのは彼の会計をする腕だけ。彼が不憫で仕方ない。このままでは夫婦仲も悪化し、男の方も一生後悔に身を蝕まれる全員が不幸になっていくんじゃないだろうか。むしろリアリスティックにやるなら最後泣きながら家に帰ってくるヒロインに離婚を言い渡して全員孤独で終わるくらいにしてくれた方が良かったのではないかと思ってしまう。
るか

るか