キャンチョメ

パスト ライブス/再会のキャンチョメのネタバレレビュー・内容・結末

パスト ライブス/再会(2023年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

最初の別れの場面が2人の今後を象徴している。段差のある階段を上がっていったノラは、家族でアメリカに移住した後、ニューヨークで作家として独り立ちしている。緩やかな坂を上っていったヘソンは、韓国で実家暮らしのまま、「平凡な」生活を送っている。そう考えると、この2人は小さい頃別れた時点で、すでに結ばれない運命だったと言い切ることもできる。

運命という言葉は、ロマンチックか残酷かの両極端な場合に使われるイメージだったが、本作ではそうではない。曖昧であり、だからこそ人間の機微が詰まった関係性である。何かが違えば結ばれたかもしれない、しかしそんなことは起こり得ない。そういうイニョン(縁)で繋がった関係だった。アーサーとヘソンの間にもまたイニョンがあるという点で、このストーリーは恋愛だけでなく人間関係全般に敷衍していると思う。

1人の人間が複数の言語を話すことで、周囲と心理的な隔たりを生んでしまうことがある。ノラはアメリカに移住してから、名前を変え、英語を主な言語として使うようになった。それでもノラの寝言が韓国語であることは、アーサーにとって自分が行けない領域に彼女がいることを示してしまう。ヘソンとの会話で韓国語を話すノラは、アーサーが知らないノラである。ヘソンにとっても、英語で夫と喋る彼女の姿は、泣くことをやめ、ニューヨークで作家として成功した、「あの頃」とは別人の彼女である。
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