INDY82

パスト ライブス/再会のINDY82のレビュー・感想・評価

パスト ライブス/再会(2023年製作の映画)
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スクリーン8 h-5

10歳前後で韓国ソウルからカナダトロントに(その後ニューヨークへ)家族で移住したノラ。それまでは何かあると泣いていたというが、慰めてくれるボーイフレンドのヘソンと離れ、だれも泣いていることを気にも留めないことに気づいたことで、泣くことをやめた。
きっと色んな苦労があっただろう。ほんとは泣きたいこともあっただろう。そんなシーンは見せずにただ移住先の学校の校庭で一人佇むワンシーンだけがあった。
そんなノラは大人になって同業のアメリカ人ユダヤ男性アーサーと結婚して時には喧嘩しても涙は見せなかったらしい。
ヘソンは大好きなノラと別れ、兵役とブラックな韓国のサラリーマンを経験して、韓国人男性としてよしとされるマッチョな男になっても、どこか淋しく、10歳前後の頃と変わらない優しさを持つ。
決して強引なことはせず、それぞれがそれぞれの運命と今の人生も前世や来世を受け入れる。
ヘソンと24年ぶりの再会のあと別れたノラは久しぶりに泣いた。10歳のダノンに戻った。そのダノンを慰めたのはアーサーだった。韓国語でしか夢を見ないノラに自分が入り込めない領域があると臆していたアーサーはきっと、初めて見るノラの姿に、ついに入っていけると、さらに優しくノラと過ごしてくれるだろう。

冒頭の、バーにいるノラ、ヘソン、アーサーの関係を邪推する別の客のように、人はステレオタイプに他人を想像してしまう。それぞれにステレオタイプな経験はあっても彼らがどう生きてきたか、どう生きて行くかはさまざまだ。

とにかく3人のそれぞれの優しさに癒された。

雨上がりの水たまりに映るニューヨークの街。ソールライターっぽくて、まさにニューヨークでした。
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