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パスト ライブス/再会のDickのネタバレレビュー・内容・結末

パスト ライブス/再会(2023年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

❶相性:上。

❷時代:2024年⇒2000年⇒2012年⇒2024年

❸舞台:ソウル、カナダ、ニューヨーク。

❹主な登場人物
①ノラ(ナヨン)〈グレタ・リー〉:1988年韓国生れ。劇作家。12歳の時、家族でカナダに移住。現在ニューヨークに暮らす韓国系カナダ人。韓国名はナヨン。
②ヘソン〈ユ・テオ〉:1988年韓国生れ。ナヨンの幼馴染。ソウル在住。
③アーサー〈ジョン・マガロ〉:ノラの夫。作家。ニューヨーク在住。

❺考察
①幕開きは、2024年のNY。深夜のバーで3人の男女が話し合っている光景がロングで捉えられ、アップとなり、会話内容が聞こえて、その後の過去の展開で、3人の素性が分かってくる。
ⓐ主人公ノラ(韓国名はナヨン)、36歳。
ⓑノラの夫アーサー
ⓒノラの幼馴染ヘソン、36歳。
②舞台は2000年のソウルに飛ぶ。12歳のナヨンとヘソンは相思相愛だったが、ナヨン一家がカナダに移住することになり2人の仲は裂かれてしまう。
③12年後の2012年、24歳のヘソンは兵役を終え大学生に、ナヨンはニューヨークに移り名前をノラと変えて劇作家の卵になっていた。ノラはフェイスブックを通じてオンラインでへソンと再会し、スカイプで通話するようになるが、ノラが執筆活動に集中したいとの理由でコンタクトを止める。その後、ノラは夫となるアーサーと知り合い、ヘソンにも恋人が出来る。
④それから12年後、36歳になった2人は、ノラの住むニューヨークで24年振りに再会する。ノラは自宅にヘソンを招待し、アーサーを含む3人で食事を取った後、バーに繰り出す。これが冒頭のシーンに繋がる。上手い設定だ。
★Q:2回の12年後は、都合の良すぎる数字ですね(笑)。11年や13年ではダメなのですか? 
A:12年後の方馴染みがいいからです。そうしたのは作者の特権です(笑)。
⑤最後は、ヘソンがノラに別れを告げ、Uber(ウーバー)(注1)を呼んで飛行場に行くシーンで幕を閉じる。

(注1)
「Uber」はスマホアプリを使って配車、車の種類、行き先を事前に指定でき、料金も事前にわかる好評のサービス。サンフランシスコに本社があるUber Technologies, Inc.により運営。近年日本でも普及しているスマホアプリによるフード注文・配達システムは子会社の「Uber Eats (ウーバーイーツ)」が運営。(Wikipedia)

❺まとめ
★これが長編映画監督デビュー作となるセリーヌ・ソン(1988年韓国生れ)が12歳の時、家族と共にカナダに移住した自身の体験をもとにオリジナル脚本を執筆しメガホンをとったもので、本年度アカデミー賞の作品賞、脚本賞にノミネートされた。
①主な登場人物が3人だけで、大変分かり易い描き方で、ロジックの辻褄が合っているので好感が持てる。
②ノラを主人公とするラブストーリーで、ノラの視線で描かれているが、2人の男性も好意的に描かれている。
③3人の心が素直に読み取れる。大いによろしい。
④ヘソンは今でもノラを愛しているが、ノラの幸せのため、身を引いたのだ。彼に後悔はない。
⑤★ヘソンに共感する。男の美学である。『ラ・ラ・ランド(2016)』のライアン・ゴズリング、『カサブランカ(1942)』のハンフリー・ボガートを思い出した。
⑥劇中「イニョン」なる言葉が何度も登場する。調べたら、日本語の「縁(えん)、運命」に近いもので、「前世でのつながりが、来世でのより強いつながりをもたらす」というもののようだ。ヘソンとノラは来世への期待を持っていることが伺えた。
⑦セリーヌ・ソンのデビュー作は上出来であり、今後期待が持てる。
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