金魚鉢

パスト ライブス/再会の金魚鉢のレビュー・感想・評価

パスト ライブス/再会(2023年製作の映画)
4.1
『時の流れや運命の残酷さを和らげてくれる"イニョン"という価値観』

幼少期から24年にわたって数回だけ交わる2人の縁がプラトニックな恋愛。セオリー通りなら確実に結ばれるであろう初恋相手との恋が今世では実らない。既にノラが既婚者となっている現代パートでは、三角関係ともちがう男女の繋がりが『24年の時を経て再会を果たした初恋の相手』と『7年連れ添った現夫』どちらにも感情移入できるようなバランスで描かれていて、どちらの立場から観てもどこか報われないような苦しさがある。
お互いにノラとの縁を尊重しながらも、どこまでいっても自分には築けない彼女との関係・踏み込めない領域があることに対する不安や寂しさが伝わってきた。理想や過去に囚われる男の恋愛観における弱い部分が映し出されていて"もしあの時ちがう道を進んでいたら自分を選んでいたのか"という今後も拭いきれないであろう悩みを抱える3人をイニョンがそっと包み込んでくれているような切ないラストだった。
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