幕のリア

ブラックベリーの幕のリアのレビュー・感想・評価

ブラックベリー(2023年製作の映画)
4.4
ハノイ行きJAL機内にて。

香港駐在時代、iPhone登場以前のBlackBerryは高嶺の花だったと記憶する。
金持ち香港人がこれ見よがしに使っていたが、特別な機能に優れているわけではなく通話だけならNOKIAで充分。
とは言うものの、その黒光りするガジェットの美しさは垂涎モノ。
いつかイキって使いたいと思いつつ、その後結構ガラケーで粘っていた。
気付けばBlackBerryの存在すら忘れていた。

開発秘話から栄枯盛衰。

ことし公開された「AIR」に期待していたモノが全て詰まっていたと思う。
コメディ、と大雑把に括られているが、描き方は多面的。

画質、小道具、衣装、サウンド、役者、そしてテーマ性、いずれをとっても申し分無し。
わざわざカメラを遠く置きズームで手ブレ気味に撮っているのが隣室から覗き見している感あり印象的。

それぞれのCEOのこだわりが崩れる時、サクセスフルだと思われたビジネスの急転直下に歯止めが効かなくなる。
NHLへの憧憬が盲目的に爆発する時、中国生産に対する侮蔑が妥協に陥る時、80年代映画エンタメへの偏愛に待ったをかけられる時。
危ういバランスが崩れた時、ノイズが鼓膜を震わせた時、もう取り返しはつかない。

ジムがマイクの決断を受け入れる時、初めて見せるスマイル。
刹那、短くない年月を振り返り噛み締め躊躇なく厳しい現実を受け入れる。
今年見た映画の中でのベストアクトだったと思う。

スクリーンでもう一度観たい作品。

〜〜

今日の一曲

ジョイ・ディヴィジョン筆頭に
かかる曲がどれもこれもセンス抜群

Joy Division - Love Will Tear Us Apart

https://m.youtube.com/watch?v=zuuObGsB0No&pp=ygUeam95ZGl2aXNpb24gbG92ZSB0ZWxsIHVzIGFwYXJ0
幕のリア

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