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ミツバチと私のmasudaのネタバレレビュー・内容・結末

ミツバチと私(2023年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

スペインの田舎町の風景が最高に美しく、鋭くも充実の一作でした。序盤、中性的な主人公の長い髪の毛や呼び名にさり気なく触れておきながら確信はなく進み、立ちションシーンで、あ、体は男なんだと気がつかせる運びがスマート。ということは、細かい台詞や表情から、登場人物の本音を読み取らなくちゃなのね、とわかった風を装うが、ちょっと全体的に静かすぎて集中力持たず。特に彫刻制作関連のシーンが実際よりも凄く長く感じた。大人な映画...。とはいえ、終盤逃走後の名前呼びシーン!泣かない奴いない案件。お兄ちゃんの後ろ側に小さくお祖母ちゃんが映っているところが、理解の薄い大人たちに対する彼の行動のカウンター性を感じることができて良かった。そしてラスト主人公の表情、そらベルリン最優秀俳優賞だわな!ミツバチに自分の真の名前を告げるところは、映画 怪物のラストシーンと同等の祝福感。お母さんの人間性が印象的で、ずっと理解ある先進的な女性として子供に接しておきながら、いざリアルを突きつけられたときの取り乱しっぷり。これまでのジェンダーを扱った映画ではあまり見ない実在感だった。安藤サクラのお母さんとはまた違うリアルさ。子供という得体の知れない存在がグングン成長していくことへの戸惑いのみ世界共通。そしてお父さんの、あの子が見つかるなら名前なんてなんだっていい。というセリフもその世代の男性の精一杯なわけで、登場人物みんなにきちんと思いがあるのを感じた。みんなそれぞれ必死なのだ!是枝監督の「人はプリズムのように角度によって光り方が違う」という言葉を思い出す。
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