これこそドキュメンタリー。素晴らしい。
序盤は何の説明もなく、ただ凍てつく海を見つめる男の姿があるから、何を伝えたい作品なのかわからない。
ただ作品が進んでいくと、タイトルの意味がわかる瞬間が来る。その時の衝撃たるや…
海にはひとかけらの氷もなく、体を休めるには狭い海岸に押し寄せるしかないセイウチたち。
足の踏み場なんて全くないほど、そして果てが見えないほどにひしめき合い、当然圧死が至るところで起こる。
僅かなスペースを求めてセイウチ同士が牙を向け合い、小さな小さな赤ちゃんが苦しそうにもがく様子はもう観ていられない。
机上の空論や、日々報道されるニュースで、「温暖化が進み、海の生物の大量死を招いている」ということは知っている。
ただそれを映像で観ると、あまりのむごさに脳が情報を処理しきれない。
字面や数では理解しきれない、あまりにむごたらしい現実。
それをありのままに伝えてくれるドキュメンタリー作品の価値を、この作品は感じさせてくれた。