ゆめたろう

妖怪の孫のゆめたろうのレビュー・感想・評価

妖怪の孫(2023年製作の映画)
3.5
前夜祭先行舞台挨拶にて鑑賞。

長期政権を可能にした第二次安倍政権時代の異様な図太さを振り返る前半部分。
「昭和の妖怪」といわれた岸信介への畏敬の念と、母親への強烈なコンプレックを原動力に改憲論へ展開する後半部分。

下関でのきな臭い政治癒着や、自宅放火未遂事件は初めて知りました。
特に安倍晋太郎の、下関での在日韓国人への支援は本当に実父だったのか疑うほど安倍晋三の思想とは真逆だったのが意外。

ただ、安倍晋三の全体像を浮き彫りにするあまり、終始テーマの焦点が合わず。数々の疑惑や不祥事のベスト盤的印象は否めず。
随所に挿入されるアニメーションも、題材と上手く接続できておらず、全体的に散文的な印象が際立った。

シンプルに岸信介→安倍晋三へと受け継がれた政治思想、政治家へのアイデンティティの確立を深掘りして欲しかった。

欲張って言えば、やはり現役野党議員へのインタビューも欲しかったところ(ここは監督自身も殆ど断られたとおっしゃっていたので無理があるとは思うが)。

しかしながら、防衛費増額から軍靴の足音が聞こえる昨今では意義のある作品。