木蘭

マリウポリ 7日間の記録の木蘭のレビュー・感想・評価

マリウポリ 7日間の記録(2022年製作の映画)
2.5
 2016年にマリウポリのギリシャ系住民を記録した『Mariupolis』を撮ったリトアニア人監督が、開戦間もない2022年3月20日からの約一週間、転がり込んだバプティスト派礼拝堂とそこに避難している人々の営み、近隣や窓から望む街を映した映像を、"観察系ドキュメンタリー"の手法でまとめた作品。

 特に展開があるわけでもないし、時折、住民との会話シーンが入るが、特別な事件が起きる訳でもない。
 窓から廃墟となった町並みや、煙の向こうに見えるアゾフスタリ製鉄所の影を眺みながら、時折、大砲や多弾倉ロケット砲の発射や着弾の閃光、火災の炎、煙が見える程度で、直接に兵器や戦闘の様相は映らない。「あそこの坂に戦車が来た。」と人々の口に上るだけ。
 着弾の砲撃と発砲の轟音が響き渡る中で、時に建物内で身を潜めながらも、淡々と繰り返される人々の日々の営みが繰り返される。

 正にコレが戦火の下で暮らす皮膚感覚のリアルなのだろう。そこに没入する様な体験を与えるこの作品は、観察系ドキュメンタリーの面目躍如と言える

・・・初めの1時間は。

 残された映像を、フィアンセだった助監督達が作品として完成させたのだが・・・恐らく撮り高がなかったんだろう・・・撮影開始一週間ほどで監督が逮捕され、結果殺害されてしまったのだから。こういう形で観察系ドキュメンタリーにするしかなかったのだと思う。
 抗戦中のマリウポリというテーマと、監督の殺害というセンセーショナリズムで注目されているが、作品としての完成度は残念ながら低い。
 それは仕方が無い。それでも、彼が命を賭けた記録には敬意を表するし、没入もした・・・でも、2時間は辛い。
 
 しかしなぁ・・・この監督、戦場カメラマンではないので、そもそも取材を上手くこなしている様には思えないし、パンフレットの撮影日誌を読むと、状況の悪化を認識出来ていない上に、不用意な立ち振る舞いが死を招いているんだな。察するに、信頼していたドライバーが親露派のスパイだった可能性も高いんだよな・・・。
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