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未成年のCINEMASAのレビュー・感想・評価

未成年(1955年製作の映画)
3.5
【貧困に喘ぐ中、母親(清川虹子)と二人暮らしで工場勤めをしている19歳の青年(長門裕之)。懸命に仕事に従事するが、月給は残業代込みで1万円足らず…… そんな中、街でチンピラに絡まれて応戦した事を発端に、悪の道に勧誘される。「俺の仕事を手伝ったら月に2万円やるぜ」という悪漢(安部徹)の言葉に乗せられてしまう青年。麻薬、取り立て、喧嘩と色々な悪事に手を染めて行く青年。しかし、近くに暮らしつつ、弟を育てている極貧の清楚な女性(芦川いづみ)との出会いや、母親への想いも重なり、青年は悪の道から足を洗おうとするが……】というスジ。

 1955年製作・公開の日活作品。モノクロ&スタンダード&デジタル上映。未ソフト化作品。監督&脚本は井上梅次。妻は大女優の月丘夢路という御仁である。今年=2023年は井上梅次の生誕100周年にあたる、日本映画黄金期を代表する職人中の職人監督だが、特集上映が開催されなかったのは監督数が多過ぎるためか? なにせ国内で撮った長編映画だけで120本以上。後年に香港に招かれて、そこでも複数本を監督しているから、これは記録物である。

 出演は、先述した長門裕之、清川虹子、芦川いづみ、安部徹の他、東谷暎子、広岡三栄子、日高澄子、山岡久乃、佐野浅夫、伊藤雄之助ら。

 セミ・ドキュメンタリーの風合いを纏った社会派としての側面もある。貧乏ながらも息子を愛し、息子にも愛されて、つつましく幸せに暮らしていたのに、ほどなく悪の道に染まっていく息子の姿を目にして悲嘆に暮れる清川虹子の姿がいじましく、ヒロインである芦川いづみ(と彼女が飼っている猫っ♪)も可愛い。悪漢を演じる安倍徹、青年を案じる刑事を演じる伊藤雄之助の両バイプレイヤーも存在感を発揮。そして、なにより長門裕之が若い! 役柄に対して実直に向き合って熱演している。やるせなさが充満する悲壮な幕切れが印象的。

 「傑作!!」とは言わねど、カッチリと撮られたプログラム・ピクチュアの佳作である。
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