真田ピロシキ

ソウルメイトの真田ピロシキのレビュー・感想・評価

ソウルメイト(2023年製作の映画)
3.8
『梨泰院クラス』のという前置きももはや不要なキム・ダミと『寄生獣-ザ・グレイ』のチョン・ソニがW主演なNetflixで韓国ドラマ見てる人には豪華な映画。キム・ダミ劇場とでも言うべき彼女の表現力の高さが光り、地味な田舎娘かと思えばエキセントリックなジョニス・ジョプリンであり、幼く見えれば成熟した顔を見せる八面六腑のキム・ダミ。全然面白いと思えなかった『The Witch魔女』でも彼女の豹変には感嘆させられてて『梨泰院クラス』の天才中二病イソなんてキム・ダミからすれば分かりやすすぎるくらいだ。

タイトル通り女性同士の心の交流を描いていて、キム・ダミ演じるミソとチョン・ソニ演じるハウンの義姉妹的な繋がりが話の中心となる。それに綻びが生じるのがミソが仲立ちしたジヌとの三角関係のもつれなんて展開なら嫌だなあと思っていたが、そこはそんな安っぽい話にはせず安心。ミソとハウンは正反対のタイプに見えてお互いに影響を与え合っており、済州島を出て自由奔放なそしてその代償として不本意な生活も送ったミソを後にハウンも体験して、ミソは結局は一時期のハウンのように手堅い人生を送るのが太陽と影である両者の関係を表している。その中でジヌという男は良い奴であるが完璧に蚊帳の外。「あんたのことを1番愛しているのは私でしょ!」とハッキリ言われる関係性。百合に混じる男なんてお呼びじゃないと映画からの意思表明。

そう、ミソとハウンの関係をどう捉えるか。その解釈は大きく観客に委ねられている。友情なのか恋愛なのか。それとも両方を包括したもっと大きな単純に愛と言えるものなのかもしれない。私が2人を見て連想したのは『赤毛のアン』シリーズに置けるアン・シャーリーとダイアナ・バリーを表した心の同類だ。あれに現代アレンジを大きく加えてアンとダイアナのみにフォーカスすればこの話になる。子供に永遠の親友の名前を付けるなんてまさにそう。その間柄ではギルバート=ジヌという男性は必要とされず、ミソが一時期年齢もバラけた女性同士でシェアハウス生活を送っていた点もそんな意図を感じさせる。先に書いたように恋愛感情なのかボカしてるのが意味あって、同性の連帯を描くにあたって恋愛に限らなくても良いとしたのはとかく多様性に置いても型に嵌めたがる世の中でもっと可能性を広く見つめていて意味深い。余談だが自分が最初百合として書き始めた二次創作小説も最終的には大きな義姉妹愛に収束してるので我が意にピッタリ。シスターフッドとブラザーフッドこそ必要なのだ!

そういう風に関係性をボカすのは良かったのだが、最後のカットは解釈に混乱。こうあって欲しいと願う心象風景なのだと思う。あれが事実ならいくらなんでも酷い人間としか思えず、結婚式ドタキャンの比ではない。それでなくても終盤の展開は正直安っぽい。特に本作をレズビアンの物語と解釈するなら今どきこれはダメでしょと言うような陳腐な悪手でかなり白けた。もっと言うとミソの母親及び家庭環境についてはあまりに語られなさすぎで、観客に委ねすぎな部分が多すぎる。超写実的絵画に関してもあそこまで画風が違うのに受け継げるものかと説明不足を感じるのだがそこは野暮な突っ込みなのだろう。幼い頃に言った心を描くが重要な点であるし、ジヌ最大のやらかし発言である「技術はあっても才能はない」に対するカウンターとしてあの技術を超えた心の傑作が現れるのだから。

主な舞台となるのは韓国の観光地として有名な済州島で森林の息吹を肌身に感じ風を受けるキム・ダミの姿が魅力的すぎて最高の観光PRとなっている。釜山に2回行ってるがそろそろ済州島にも行ってみたいなあ。その釜山も港への上陸や街並みは自分が行った時の感情を想起させられ良い。登場人物の視点でその土地を体験できる映画だ。