レインシンガー

ソウルメイトのレインシンガーのレビュー・感想・評価

ソウルメイト(2023年製作の映画)
3.9
あの香港映画の秀作「ソウルメイト 七月と安生」が、しかも韓国でリメイクされるとは!びっくりして観に行った。

元になった作品は、監督デレク・ツァンの「少年の君」が日本で公開され、評判になった時点で、その過去作と言うことで公開されたのだが、その面白さと切なさが染みすぎて、思い出に残る2作になった。(もちろん「少年の君」も大傑作なのだが)

では、韓国映画にする意味とは何だったのか?
たぶん(どちらも情報と想像でしかないのだが)香港に比べれば、韓国の方が生き方の自由度は少し高い気がするが、それでもいまだに儒教が生きていて、若者や女性の生きづらさは変わらず続いているのだろうと感じている。
その点で「共感を表する」リメイクだったのではないかと思う。

骨子はあまり変わらず、転校した小学校で知り合った二人の女の子が、片方の家庭の問題から、ほとんど一緒に生活するくらいになり、そのせいもあって、まさしく「ソウルメイト」と言える存在になってしまう。
その幼い日々の美しさと楽しさ、そして失ったら二度と戻れない、帰ることのできない日々への切なさが胸を焦がす。
そして、恋と進路(将来、職業、夢)が、二人の人生を混乱させていく、と言う筋立て自体は、原典のままだ。
しかし、今現在から過去を振り返る、という位置関係を強調していた原典に比べると、編年体に近い語り口になっている本作の方が、ある意味「素直なストーリーの流れ」になっていて、わかりやすい。だから、ヒロイン二人の心根と生活の厳しさとに寄り添える。
その分、どことなく「夢幻的」というか、ファンタジックな「微妙なわかりにくさ」をもっていた原典に比べると、ラストの意外な展開の驚きは少し薄まった気がする。

原典を89点と考えて、本作は79点、というのが見終わっての感想。よい作品だし、観る価値は十分あるが、原典を踏まえると、あともう一点何か本作らしさをプラスして欲しかった。
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