せっ

ビヨンド・ユートピア 脱北のせっのレビュー・感想・評価

4.5

脱北を手伝っている牧師さんが幼い子供とお婆さんを連れたある一家の脱北を助ける様子をリアルタイムで撮影したドキュメンタリー。

今回の一家が脱北するルートは、北朝鮮から出るのでも大変なのに出た後も超国土の広い中国を抜け、共産主義国のベトナムとラオスで隠れながら国境の険しい山を抜け、最後には超不安定な船で真っ暗闇の中メコン川を渡りタイに出るという超過酷ルート。

この道中を撮影してるのがもう凄すぎるんだが、強く印象に残るのは見つかったら間違いなく死しか待っていない家族の恐怖と疲労と絶望が入り交じった顔。ヨーロッパとかの難民の映像を見ると子供たちって、恐怖というより不安が大きい印象で、ここまで子供の顔に恐怖が出ているのを始めて見た。

そんな思いまでしてるのに金正恩のことを褒め称えているのを見て、これって洗脳というより「ありがとう」と言われたら「どういたしまして」って返すみたいな、深くは考えないけど当たり前のこととして浸透してる習慣みたいなものに思えてきた。

道中隠れ家で束の間、今まで食べたことないお菓子や豊富な水、ベトナムの豊かな緑を見て感動している様子も映していて、絶対この人達のがこれからの人生の幸福度は高いだろうなぁと思った。日本でもっと豊かな生活をしている私から見たら、ベトナムのその環境だってかなりキツイからなぁ。

洗脳が解けた後にもっと早く脱北してれば、大事な機会を失ったと落胆していたけど、その分今後感じる幸せは人一倍大きいだろうし、食べるものがちゃんとあって死の恐怖に怯えることがない環境なら発展してないからといって必ずしも不幸ではなかったはず。彼らにもあの場所で彼らなりの幸せだった瞬間があって、あんな国でも大切な故郷なんだなぁと身に染みた。

というか私でも途中でぶっ倒れてそうな脱出ルートを通常は足を引きずって歩いてるおばあちゃんが、最後まで自分の足で歩いてついてきているのを見て、この歳まで北朝鮮で健康に生きるならここまで強くないと生き残れないのでは?と思った。ベトナムの蒸しあっつい中10時間山越えは普通に死ぬよ。日本のじいばあは1時間で死ぬよ(笑)
せっ

せっ