たにぐそ

ビヨンド・ユートピア 脱北のたにぐそのレビュー・感想・評価

3.8
電波少年的、脱北ガチンコドキュメンタリー

再現映像なしでまざまざと過酷な道程や脱北者一家の生の声が映し出されると、観た後味は不謹慎かもしれないが「インターステラー」や「トゥモローワールド」のような地獄めぐり的なハードSF映画と同じものを感じた

それこそ作中でも「ディストピアSF」「フィクション」に例えられる北朝鮮国民のむごすぎる「現実」をガツンと食らわされる一本でした

ただ、映像自体はドキュメンタリックですが、編集や劇伴はかなりエモーショナルな作りになっているので、その力も強く、好みは分かれるかも

エンディング近く、韓国入りして数ヶ月経ったお父さんがふと「50代で遅すぎた」と機会の喪失を嘆く一方、未来ある娘二人を映すカット

そしてエンディングで差し込まれる北朝鮮の国民の日常が、未だに解決していない、投げかけで終わる切れ味よ

ただ、生き延びた脱北者の「その後」については、負の面がオミットされていてやや残念

差別を受けたり支援金目当ての詐欺にあったり、資本主義社会に馴染めず貧困に陥ったり孤立したりで、一定数北朝鮮に戻りたいとまで思う人が出てきてしまう難しさ

単純に脱北させて終わりという「めでたしめでたし」ではなく、その先の課題まで描けていれば、より厚みがあるドキュメンタリーになるかと思ったが、それだと共産圏の人権保護という今作最大テーマから逸脱するのか

あと流石にそこまでは韓国のクリエイターでないと描くのが難しいのかも…
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