こうみ大夫

ビヨンド・ユートピア 脱北のこうみ大夫のネタバレレビュー・内容・結末

4.7

このレビューはネタバレを含みます

よくぞ撮り切ったという世界最凶クレイジージャーニー。
北朝鮮は他国の映像を見せながら「わが国は他と比べてマシだ」と洗脳するというシーンがあったが、それは日本も同じことだ。こうして北朝鮮の惨事を見ながらうちはマシだ、と多くの観客は思う。しかし北朝鮮が90年代に崩壊し、そこから軍事化、貧困、洗脳大国となったように、日本も同じ道を辿る可能性は十分ある。この映画はそんな風に、北朝鮮の悪い面だけを強く映し出さないところにリアリティがあると思った。何も捨てない、うんこも再利用なんて欧米の推し進めるSDGsまんまじゃないか!おばあちゃんが北朝鮮を、金正恩を悪く言わなければならないということも洗脳なのか??きっとこれは北朝鮮だけの話ではなく、故郷を捨てなければならない人々の話。韓国と北朝鮮、同じ言葉を使う人々でありながら北から南へ行こうとする難民の映画でもあった。重要な役割を果たすブローカーたちは決して良い人という立ち回りではなく、あくまで金で動く「利用し」「利用される」牧師たち、というビジネスの関係性の中に脱北が成立してる、というのは物凄く納得した。
ラオスやタイを通過するという知らなかった脱北ルート、そして見えないが確かにある中国と北朝鮮の監視の眼が、とてもすぐ近くのアジアで起きている出来事とは思えないくらい恐ろしい映像だった。
こうみ大夫

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