金春ハリネズミ

ビヨンド・ユートピア 脱北の金春ハリネズミのレビュー・感想・評価

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ジョージ・オーウェル「1984」を映像にしたような衝撃です。

近くて遠い存在こと「北朝鮮」の実態が垣間見える一本。

個人的にはヘンな国、頻繁にミサイルを威嚇射撃してくる、かまってちゃん国くらいにしか普段認識していませんでしたが。

蓋開けたらびっくり。
こんなにエグい内情がありましたか。

本作は大きく2つのエピソードがクロスロードしますか。
1.五人家族の一世一代をかけた国外逃亡。
2.故郷へ置いてきたひとり息子の脱北を、隣国の韓国から祈る母。

どこまでが本当の映像なのかわからなくなる、目眩を覚えながら見てましたが、全てがいま現在起こっている事実だよというわけですか。、
絶句です。

隣が韓国なんだから、ひょいと移ればそれで安全でしょう?
くらいにぼけ〜っとしてると、とんでもない。
北緯38度線の国境には足を踏み入れることができないほどに地雷が敷き詰められているそう。
脱北とは即ち、北朝鮮→中国→ベトナム→ラオス→タイまで行かないとダメですよと、
しかもラオスまでは北朝鮮とは友好国というわけですから。
ええ、。厳ついです。

難民に関しては日本国内でも意見が二分されています。
なかなか一筋縄ではいかない問題です。
けど、「FLEE」とかこうしたお話を目の当たりにすると、「悪いことしたんだから国に住めないのは自業自得だ」とか、「犯罪者を国に入れてはいけない」とか「憲法違反だ」とか、安直な保身に走る軽はずみな発言は、とてもできません。

そんな世の中簡単じゃないし、何が正解かなんてすぐに判断していいわけがありません。
そういうことを考えさせられる映画でした。

パンフによれば、パンデミック以降の昨今では朝中国境線にも有刺鉄線が敷かれてしまって、本作よりも事態は厳しいものになっているそうです。