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マリウポリの20日間/実録 マリウポリの20日間のganaiのレビュー・感想・評価

4.5
2022年2月から3月にかけてロシアから激しい攻撃を受けたウクライナの都市マリウポリの22日間を捉えたドキュメンタリー映画。

NHKでも放送されたらしいけどYouTubeでウクライナ版を鑑賞。ナレーションは短いセンテンスの英語で現地人のウクライナ語にも英語字幕が付いてるのでだいたい理解できます。というか画像だけでどれほど酷い事が起こっている分かるレベル。

作中でロシアの標的になっているのは徹底して一般市民で特に女性や子供が多い。(壮年男性はゼレンスキーの施策で兵役に就いてるから?)

映画序盤から悪夢さながらに次々と負傷者が病院に運ばれてくるのだけど、その病院も標的にされているらしく転院する患者を追ってカメラも次々と移動していく。

中盤で片足を負傷(恐らく欠損)した妊婦の出産を捉えたシーンがあるのだけど、産まれた赤ちゃんがなかなか呼吸を始めないのを医師たちが必死で処置して遂に泣き声をあげるところで思わず涙が出てしまった。だが安心した次の瞬間病院近くで爆撃が起こり一気に緊張が高まる。

目を背けたくなるような悲惨な映像ばかりなのだけど、市民たちは「これを撮れ。世界に伝えろ」とカメラに向かって呼びかける。

自分が最近注目しているパレスチナ/ガザ地区の状況とよく似ていると思った。誰も悲惨な姿は人に見せたく無いものだけど、もっと恐ろしいのは自分達の存在が世間に知られず無にされてしまうことなのだろう。

これがガザと違うのは少数とはいえ武装したウクライナ正規兵が病院や市民の護衛についている事だろうか?

制作側が意図しているのか最初と最後で車体に「Z」が書かれた戦車が病院に砲身を向けるシーン以外は、爆撃も銃撃も音だけで戦闘機やロシア兵の姿が映ることがほとんど無く、それが恐ろしく不気味だった。
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