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マリウポリの20日間/実録 マリウポリの20日間のmahirunoahiruのレビュー・感想・評価

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 ね、ねこちゃん涙。
 一部に、「現実に人が被害に合っている事件を作品にしてはいけない」みたいな風潮あるじゃないですか。私はあんまりそうは思わないんだけど、これが創作物だったら、「子供と動物出すぎててあざといかも……」とは思ってしまったかも。でも、街中とか避難所の光景を見ても子供も動物も現実にいるんだよね(それを狙って映してるところはあるにしろ)。かわいいものがひどい目にあう姿を見たくなっていうのは甘えなのかも。だって現実ではひどい目にあっているわけだから。もちろん時には甘えることも必要だけどね。

=====以下ネタバレ=====

 ネタバレとかあるのかわかんないけど一応。別にこれを読んだら映画の体験が減るということもない気がするけど、映画を初見にしたい人はいると思うし、観た人向けの感想ということで。



















 最初は避難してる住民は「撮るなよ」みたいな感じでチェルノフさんを迷惑がってるんだけど、お医者さんだけは「これを撮影してロシア軍に見せろ」って言ってるのが印象的だった。しかも時間が進むにつれてみんなが追い込まれて、ひどい現実に直面して、だんだんとチェルノフさんに「撮ってくれ」「この地獄を誰かに伝えてほしい」って言うようになるんだよね。お医者さんはやっぱ人の死に直面してるから、最初から「とんでもなくひどいことが起こっていて、世界に伝えなきゃいけない」っていう切迫感を持っていたのかな~。
 なんかえらい人……隊長?の演説にもあったんだけど、民間人がいる、民間人しかいないのに攻撃の手をやめないのはやっぱ立派な戦争犯罪なんだね。まあ言うて昔の戦争では普通に起こってたことだと思うので、私の中では「ありえん」というよりは「今はこれをさせない決まりが守られている」という感じだけど。現代の価値観に照らし合わせるとロシア側でもヤバイって認識はあるから、マリウポリについての報道について開き直ることはできず、「フェイクニュースだ」としか言えなかったんだね。
 っていうか、病人を収容してる病院に戦車が押し寄せたら、もう戦争っていうより国家予算を使って堂々と行われる殺人って感じだよ~。これやれちゃうのほんまおそロシア~とか思っちゃうけど、イスラエルだって民間人は標的にしていないと言いながらアレレ?ってとこあるし、ロシアというより人間の問題なのかも。え、私命令されたらこれやんの?? 被害者になるとしても加害者になるとしても嫌だな。日本徴兵制なくてよかった。これからはわからんが。
 十二国記で尚隆は言う。「戦争になったら降伏して、みんなでそこの国民になればいい」(え、言ってたよね記憶違いだったらごめん)。これは長らく私の基本的な価値観だった。ウクライナの人達に対して「降伏すれば?」と言うのがどんなに残酷なことか考えていないわけじゃないけど、実際問題そこに戦車が来ていてニ週間前まで普通に日常生活を営んでいた人が殺されるかもってなると、どうしても「降伏すれば助かるのでは?」という考えが頭をよぎってしまう。それに対する答えが、「将来子どもに『この異常な破壊の連鎖を止めるためにパパは何をした?』と聞かれた時に答えを持っておきたい」ってことなんだろうな。自分だけ、マリウポリだけの問題じゃない。マリウポリの背後には他のウクライナの都市とか、もしかしたら日本もいる。あと「おまえ捕まったら全部フェイクニュースでしたって証言させられるよ」が降伏してはいけない理由すぎる。
 とはいえ、こういう時に人間はどういう行動をとるべきかの答えは全然出てないです。英雄的な行為って自分の命より重いのか? 英雄的な行為が被害を拡大させることだってあるし(日本軍が負けが込んでるのに降伏しなかったこととかね)。でも今回チェルノフさんが撮影を続けたように、必要な英雄的な行為っていうのもある……気がする。英雄的というよりは道徳の問題なのかも。私も愛着のある人達の不利益になると思ったら降伏できないかも。いやしちゃうかも! そんな条件が曖昧すぎる質問には答えられません! その場にならないとわかんないです。

その他感想
・スマホで爆撃情報を入手している!現代の戦争なんだなあ
・爆撃は音が聞こえてきてても当たるか当たんないのかわかんないのがやばい 嫌なガチャじゃん
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