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マリウポリの20日間/実録 マリウポリの20日間のせっのレビュー・感想・評価

4.3

ロシアによるウクライナ侵攻が始まった日からマリウポリに留まり続け、映像を記録し続けたAP通信記者が捉えた20日間の映像。

民間人とほぼ同じ目線でマリウポリを捉えたドキュメンタリーでもあり、20日間記者として情報戦を戦った記録でもあった。ロシアの軍に囲まれて追い詰められたマリウポリの人々にとって、ロシアに反撃できる武器はこの現状を世界に伝えること。

通信をほぼ遮断されているマリウポリでは電波が繋がるところを見つけるのもひと苦労なので、病院の医師たちは進んでこの惨状を撮ってくれと死体を記者に見せ、通信が繋がるところまで誘導してくれたり、記者をマリウポリから逃がすために力を貸す兵士の人達がいる。

一方で、通信を遮断されたマリウポリでは情報が全く入ってこない状況が人々の心を追い込んでいく。情報が溢れかえる現代では、逆に何も情報が入ってこないことって1番苦痛なんだなと思った。デマでも、その人にとってそれが希望になるのならまだマシなのかもと思ってしまった。

今作を見て、見せなくても伝わることなんて何も無いんだなと思った。子供がたくさん死んでいるという情報やニュースで少し見ていても、それは一端でしかなかった。そしてこのドキュメンタリーすら、マリウポリ陥落まで68日ある中の約1/3の期間でしかないということ。少しでも多くの時間撮り続けること、その重要性を身に染みた。

まだ幼い子供が死ぬショッキングな映像や泣きわめいたり怯えたり怒りをぶつける市民たち、どれも強烈に記憶に残るけど、私は母が見てるかもしれないから私を映してくれと言い、カメラに手を振って微笑んでいた女性が1番印象に残った。不安な中で見せたテレビの前で見てるかもしれない母親に示した彼女の微笑みが忘れられない。
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