sashaice

マリウポリの20日間/実録 マリウポリの20日間のsashaiceのレビュー・感想・評価

4.5
戦争慣れしてしまった世界にもう一度一石を投じる大変重要な作品。日常が地獄に変わる瞬間、死にゆく⼦供たちや遺体の⼭、無慈悲な破壊の連鎖、長引けば長引くほど虚しさが増す無意味な命の損失。死にゆく人間と同じように灰色に染まるマリウポリ。終始涙が止まらなかった。

砲撃で傷ついた子どもを救おうと心臓マッサージなどを続ける医師たちが「この惨劇を世界に伝えてくれ」とカメラに向かって叫ぶ姿が頭から離れない。見れば見るほど平然と嘘をつき、戦争を美化し、無意味な戦争を続ける張本人に腹が立ってしょうがない。

産院への爆撃など、侵攻するロシアによる残虐⾏為を命がけで記録、世界に発信し続けたウクライナ人記者、ミスティスラフ・チェルノフ。"この悲劇を食い止めるためにパパは何をやったの?"と言う問いに答えるための使命感。

民間人が住むマンションを容赦なく爆撃し、理不尽に命を奪っていくロシア軍。突然、住む場所や家族を失った人々が泣き叫ぶなか、涙をにじませて幼い子供の治療にあたる医師たち。

何のための戦争なのか、もう一度胸に手を当てて考えてみてほしい。戦争を起こした張本人に。これだけ取り返しのつかない損失を被っておいて10年後、ロシアに何が残るのか。著しく破壊された町、無駄に失われた人命、国際社会から失われた信頼、かつては兄弟と呼んだウクライナとの取り返しのつかない断絶。
sashaice

sashaice