無影

マリウポリの20日間/実録 マリウポリの20日間の無影のレビュー・感想・評価

5.0
ロシアにより包囲されたウクライナの都市マリウポリ。そこに20日間留まったジャーナリストが紡いだ数々の悲劇の映像。ニュースで見たあの映像はこんなにも命がけで撮られたものだったんだという至極当然なことに気付かされますし、ニュースで見るのとは比べ物にならないぐらい、ウクライナの悲劇が視覚的に飛び込んできます。より多くの人に観てほしいので★5。
本作を観て感心したのは、ジャーナリストに対する市民のリスペクトの大きさです。日本では中東にジャーナリストが入ろうとして激しいバッシングが起こりましたが、それは「お上」に対する信頼が異常に厚い裏返しとしてジャーナリズムへの理解が浅いことが原因です。国や政府が伝えようとしない事実、伝えられない事実を伝える意思、(ちゃんとした)能力や信頼を持っているのはおおよそジャーナリストだけなので、自分たちの窮状や声を監督に託していたウクライナの市民が輝かしかったです。
また、市民が選んで始める戦争はないのだなと、改めて思い知りました。日本では河村たかしや三浦瑠璃といった有象無象が国のために死ぬことの尊さや徴兵制復活による戦争への当事者意識の醸成などと口にしていますが、戦争において市民に彼らが説くような主体性はありません。国のために死ぬことを選ぶのではなく強制されるのであり、徴兵されることで戦争忌避の意識を高めるのではなく死にに行かされるのです。こういった妄言が持て囃されている昨今の日本社会には本当に危機感を覚えます。
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