ぶみ

マリウポリの20日間/実録 マリウポリの20日間のぶみのレビュー・感想・評価

5.0
この惨劇を世界に伝えてくれ。

ミスティスラフ・チェルノフ監督、脚本、製作、撮影によるウクライナ、アメリカ製作のドキュメンタリー。
2022年2月、ロシアがウクライナ東部の都市マリウポリへ侵攻を開始してからの20日間を追う。
本作品はAP通信のウクライナ人記者である監督と、その取材チームがマリウポリ市内に残った唯一のジャーナリストとして記録した映像にナレーションをつける形で進行するのだが、これはもう百聞は一見に如かず。
ロシアが何をし、そしてウクライナで何があったのか、それが過去の話ではなく現在進行形で何が起きているのかを伝えてくる映像となっており、常に鳴り響く爆撃音に、命の灯火が消えつつある過程、平然とそれをフェイクだとするロシア等々、観ているこちら側が息苦しくなってくるものばかり。
何より、爆撃後に発生する衝撃波で空気が揺れる様子が克明に捉えられているのは、フィクションとなる戦争映画では描写されない点であり、これが現実なんだと訴えるにはこれ以上ないものとなっていると同時に、閉ざされた空間であるスクリーンにおいて大音響で体感するだけの価値あり。
ウクライナの市井の人からすると不条理以外の何ものでもなく、監督がアカデミー賞授賞式で「この映画が作られなければよかった」と語ったのが、本作品の存在意義を示しているとともに、これぞジャーナリズムであり、個人でできることなど何もないのかもしれないが、何がウクライナで起きているのかを考えると、政党の裏金問題が今もなお毎日のように報道されているのが恥ずかしくなってくる衝撃の傑作。

イリア、16歳だった。
ぶみ

ぶみ