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マリウポリの20日間/実録 マリウポリの20日間のneokamakiriのレビュー・感想・評価

5.0
どんな戦争映画よりも、戦争映画であり、今を生きる我々として見るべき作品。何の意味もない戦争の愚かさを、間近で追体験させてくれる。アカデミー賞受賞も納得の傑作。
ライブ故のリアリティと鮮度に満ちた素材で、現在進行形の問題を魅せる。命の危険を顧みず、様々な視点から構成される映像には惹き込まれ、その重さが心に刺さる。

特筆すべきは2点。一つは、普通なら避けて通る悲惨かつ凄惨な光景を、敢えて眼前の光景として切り取り、容赦なく見せ続ける点。ウクライナ人記者だからこその功績。戦争の悲劇を伝えるためとは言え、直視したくない現実を、これでもかこれでもかと映し続ける。
もう一つが、あくまで中立であろうとする点。感情に乗せてロシア批判に偏ったり、安直にドラマ仕立てにすることがない。ウクライナ自身の愚かさも、包み隠さずに映す。それでも、フェイクニュースを筆頭に、人の道から外れる、隠しきれないロシアの異常さ。

立て続いて鳴り響く爆音の生々しさと恐ろしさ。脱出シーンの緊迫感は、戦争映画のそれと比ぶべくもない。軍艦島のような瓦礫の山の光景は、フェイクでは作り込む気が起こらないレベルの圧巻の光景。そんな中でも訪れる命の輝きには、涙せざるを得ない。

イスラエルしかり、世界で続く悲劇の連鎖。どうすることもできない私としては、今作を広めることがます思いつく解であり、この点数とする。
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