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虎の尾を踏む男達のNOBUのレビュー・感想・評価

虎の尾を踏む男達(1945年製作の映画)
4.5
戦中、戦後にかけて製作された黒澤明監督の名作。
この混乱にかけてこれほどの良作を手がけ後世に残したことだけでも敬服に値する作品。
一時間に満たない作品ではあるものの、ボリューム感満載で展開の良さは黒澤ならではといったところであるが、
フォトジェニックなインサート映像や、リズミカルなカット割りは後の黒澤作品でもお目見えすることになるのだが、日本の伝統芸である能楽を西洋風の音楽に仕上げてインサートしているところなど和洋折衷という風味が混じり、映像、音楽、ストーリーの構成からも今日の観点からして1945年製作とは思えないくらいの完成度の高さである。

本作での主役はもっぱらエノケン演じる強力である。
シリアスで緊迫感ある世界観を大河内傳次郎演じる弁慶が引っ張っているのだが、もちろんこれは「勧進帳」を原作にしているものであり、この空気を柔らかくそして愉快にさせている本作の醍醐味ことエノケンの表現力であり、それは冒頭から始まる。
大河内傳次郎とエノケンの対比するコントラストはなんとも言えない絶妙なバランスを以って作品を引っ張っている。

ところで、黒澤作品ではよくあるのだが、セリフが聞き取れず何を言っているのかわからないことがよくあるが、これも黒澤の狙いなのだろうか?
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