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虎の尾を踏む男達のkojikojiのレビュー・感想・評価

虎の尾を踏む男達(1945年製作の映画)
3.3
1945年 監督:黒澤明
キャスト:大河内伝次郎、榎本健一

 第4作 歌舞伎「勧進帳」

 歌舞伎「勧進帳」名場面に「強力」の榎本健一(エノケン)の役を加えることで、重い歌舞伎を軽妙な映画に仕上げて、娯楽性を強調した黒澤明の脚本。戦時中の暗い世相に、映画ぐらい明るくいこうとの気概がうかがえる。 
 黒澤明がわざわざ加えるぐらいの役回りをしっかり演じている榎本健一はさすがだ。
 大衆に愛され、親しまれると愛称でよばれるようになると親父達からよく聞かされていた。「ばんつま」「あらかん」「エノケン」。愛称で呼ばれる俳優は多くはない。エノケン主演の映画をしっかり観た記憶はないが、この映画を観ると、さすがに愛称で呼ばれるだけのことはあると納得した。

 もう一人主人公大河内伝次郎。この俳優、私が映画を見始めた時は、もうずいぶん年を取られていて、何を言ってるのかさっぱりわからない俳優の一人だった。
 京都嵐山奥に竹林を見に行ったとき訪ねた庭園が、彼の別荘跡だと聞いた時、その庭園の場所(よくぞこんなところに別荘を建てたという驚き!)、美しさに、すごい役者さんだったんと見直した記憶がある。この映画の弁慶役は、その驚きを納得させるものだった。

 しかし、それにしても、何が問題で検閲に引っかかったのだろう。時代というものは、厄介なものだ。 
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