砂場

虎の尾を踏む男達の砂場のレビュー・感想・評価

虎の尾を踏む男達(1945年製作の映画)
4.1
初期黒澤4作目、大好きな一本だ!
まずはあらすじから

ーーーあらすじーーー
■平家滅亡後、源頼朝は実弟義経排除に動く。弁慶など手勢含めたった7名で山道を行く。山伏に扮した一行と一人の飄々とした強力(エノケン)。
■強力は義経一行とは知らず、頼朝勢の企みをとうとうと説明すると、、、、もしやこの一行が義経たちでは、、、強力はこの先の関所で地頭富樫が陣を張って待ち構えていると情報を知らせる。強行突破かあくまでも山伏のふりを通すか、、、強硬論もある中、弁慶(大河内傳次郎)は仮に突破してもその後逃げおおせるはずもない、あくまでも山伏のふりを貫く戦略を決める。
■義経(仁科周芳)の優美さは隠せるはずもなく、強力の粗末な着物を着せる。
■関所では富樫(藤田進)が待ち構える。一行は山伏であることを説明するが怪しまれる。勧進帳を聴聞させろといわれ弁慶、機転を利かせ白紙の巻物をいかにもそれ風に読み上げた。弁慶のよどみない答弁に富樫はすっかり騙され関所の通過を許可する。
■しかし官吏がその強力は義経に似ていると言い出す、、一触即発、、その時弁慶は錫杖でお前が女々しいので勘違いされるのだと何度も打ち付ける。富樫はそれを見て主君を打つはずもなかろうと、一行の通行を許可するのだった。
無事通過し、弁慶は義経を打ったことを涙ながらに謝罪。義経は私を打ったのはお前の手ではない、八幡大菩薩の有難い手だと感謝の気持ちを伝える。
■富樫から届いた酒で祝杯を挙げ、強力が酔いつぶれて目覚めると一行は
すでにいなくなっていた。
ーーーあらすじおわりーーー

🎥🎥🎥
★歌舞伎の『勧進帳』をベースにしている。
戦争が撮影中に終わるというバタバタの中で制作された本作、よくぞこのような喜劇映画が撮られたもんだと感心する。
★エノケンの軽妙な芝居、大河内傳次郎の迫力のある弁慶。個人的に大好きな一本だ。まず冒頭の山伏の一行からして絵的に魅せる。ちょろちょろ動き回るエノケンの強力と対照的に、一行の存在感がすごい。まあただならぬ雰囲気に満ち溢れており関所でばれちゃうだろうなと思うがw
とにかく一般庶民とはかけ離れた体力知力のエネルギーを感じる。
★強行突破はせずに弁慶の機転で切り抜けるのだが、これが下手なチャンバラバトルよりもハラハラ感があり結末を知っていても手に汗握る大河内傳次郎の名演。
相手を言葉で圧倒するド迫力、あれでこられては関所も通してしまうだろう。
★スターウォーズというと『七人の侍』『隠し砦の三悪人』の影響が良く言われるところだが、個人的には本作の影響もあるのではないかと思う。
フォースの力の一つにマインドトリックがあり、相手の意思をコントールできる。武力で倒すだけがフォースではないのである。
弁慶(大河内傳次郎)のフォースによって、富樫(藤田進)はマインドコントロールされた状態ともいえる
★弁慶のマインドトリックがあまりに強烈なので、バトルシーンの一切ない本作であるが異様な緊張感にあふれている。もちろん、そこにうまい具合にエノケンのコミカルさが加わるのであるが。
★とにかく喜劇の面でも迫力の面でもすばらしい一作だ
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