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COUNT 100のdm10foreverのレビュー・感想・評価

COUNT 100(2023年製作の映画)
3.6
【鬼ごっこ】

SSFF&ASIA2023にて。
俳優の玉木宏が監督、脚本を務め、主演は林遣都が演じる不思議なショートフィルム。

プロボクサーの光輝(林遣都)は、一度は頂点に立ったものの、初防衛に失敗したところから人生の下り坂を転がり落ちるような人生を送っていた。
そんなある日、彼は偶然歩いていた街角で「一念発起システム」と書かれたチラシを手にする。
彼女にも愛想を尽かされ、精神的に追い詰められた彼はそのチラシに書かれた場所を訪ねてみるのだった・・・。

っていうお話。

いわゆる「世にも奇妙な物語」や「笑うセールスマン」的な、ちょっとダークな寓話系ファンタジー。
自分に自信がないってのは今までずっとだとして「もう、どうして良いのか・・・」っていうほど追い詰められた・・なんていう経験は僕は殆どない。
何だかんだ言っても、「濃い目のカルピス」でも飲みながら一息つけば、大体のことは再チャレンジしてみるか、或いは・・どうでもよくなる。

でもやっぱり人生の岐路に立っているような人にとってみれば、そんな簡単に済むような事ばかりではないんだろうし、得てしてこういう「怪しいお誘い」にも気が向いてしまうのかもしれない。

まあ「ボクサー」自体やったことがないからよくわからないけど、何処まで行っても茨の道っていうか、スポーツの中でも1、2を争うくらいにストイックな精神性が試されるスポーツじゃないですか(中には天性のセンスだけで頂点まで行けちゃう人もいるけど・・)。
そんな世界に生きていながら「もう一回」って立ち上がるのって、最初の一歩目よりもハードな気がするな・・・。

で、そんなところに舞い込む「一念発起」という謎のシステム。

・・・ははぁ、なるほど、そういう意味ね。
これは「ハイリスク・ハイリターン」を地で行くような選択ですわな。
『人生をやり直すのなら、全てをやり直す覚悟で死ぬ気になって頑張れ』っていう、どこかの進学塾のキャッチコピー並みの文句を深読みしたらこうなりましたって言う感じ?

なるほど、これは確かに「COUNT10」では足りん。
「~100」っていうのがいろんな意味で変化をもたらしたり、周囲がその変化に対応したりするには雑妙なカウントなのかもしれんね。

どこか「ある男」的な一面も持ちつつ、短編作品である以上どうしても「ある男」のようなリアリティを煮詰める時間が無いので、ファンタジーテイストにしたのはこれはこれで正解だったかも。
ちょっとダークだけどね。
クライマックスで喪黒福造が出てきて「ド~~~~ン!!」ってシャウトしちゃうくらいの感じで(笑)

「一念発起」
てっきり「自分の人生を一からやり直せる」とばかり思っていた。
でも、本当に貪欲に「取り返したい」と願う人間は、もっとエグいところまで堕ちているのかもしれない。
たとえ、それが「自分の人生」じゃないとしても人としてやり直すことが出来るなら・・・。
なるほど、だから「一念発起」か。
いまいちしっくり来なかったけど、レビュー書きながら何となく分かってきたわ。

それにしても林遣都の脱力感って名人芸だよね。
あのちょっと気だるそうな目つきとか、本人は頑張っているのに何故か周りには伝わらない雰囲気とか。
そんな彼が「落ち目のボクサー」っていうのはハマっていたと思うな。
でも体は結構バキバキに鍛えてました。
さすが。
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