ウォーターライブラリー

ゴッドランド/GODLANDのウォーターライブラリーのネタバレレビュー・内容・結末

ゴッドランド/GODLAND(2022年製作の映画)
4.9

このレビューはネタバレを含みます

人間と動物の諍いと死を目の当たりにしながらも歩みを全く止めない自然、その風景の移ろいを収めたショットの数々に、荘厳さと美しさがまとわりついていた。

人間の諍いに自然は全く関与せず、その厳しさを保ち続ける。それは人間の欲望によって殺された馬の死体が、骨になってゆくまでの季節の遷移のシーンに顕著に現れる。牧師にとっての通訳亡き後の心の依存先でもあった愛馬が横たわっている。しかし自然はそんなことを全く気にせず移り変わってゆく。それは同じ地点でのショットを重ね、植物の生まれ変わりを示すことにより表現されている。

最後に、父権についてひとこと述べておく。この映画のテーマの一つとして描かれる父権。すなわち、アイスランドの二人娘と寡夫のシークエンスで描かれる父親のことである。この父親の子供に対する独占欲(それは牧師と関わらないことを宣言させたり、歌いながら浜辺を歩くシーンでとくにあらわれる)を前に、牧師もキリスト教も教会も機能しない。この神と祈りの敗北というテーマは、自然を前になすすべのない牧師の姿と二重奏をなしている。