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ゴッドランド/GODLANDのsatoshiのレビュー・感想・評価

ゴッドランド/GODLAND(2022年製作の映画)
4.3
 本作は、ディスコミュニケーションの映画だと思った。主人公のルーカスは、アイスランドに教会を建てるべく過酷な大地に足を踏み入れるが、結局、最後まで現地住民とコミュニケーションをとろうとしない。それが結果的に悲劇を生む。この視野の狭さを象徴するように、本作はスタンダードサイズが採用されている。ショット全てが色使い、構図含めて非常に素晴らしい。

 スタンダードサイズには他にも意図がある。それはルーカスの視野の狭さとともに、アイスランドの雄大さを強調する役割。本作は基本的に人間に興味が無さげで、序盤は特に顕著で、最終的に人を追うのを止めて円状に長回しで大地を描いてしまう。これによって、ルーカスのちっぽけさが強調される。後半はドラマが描かれるが、圧倒的な自然の前では陳腐でしかない。

 ルーカスは写真を撮る。高橋ヨシキさんがコラムで書いていてなるほどと思ったのだけど、これも彼の視野の狭さを表象している。自身の狭い世界でしか物事を判断できない。そしてそれは他者への無理解へと繋がり、悲劇へとつながる。最後は土地と一体化してしまう。個人など、この大地ではちっぽけな存在なのだ、と言わんばかりの映画だった。

 余談。『悪は存在しない』と続けて見たのだけど、①ディスコミュニケーション、②自然と人間という2点で、意図せず共通する点が多い2本立てになってしまった。
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