故ラチェットスタンク

ゴッドランド/GODLANDの故ラチェットスタンクのレビュー・感想・評価

ゴッドランド/GODLAND(2022年製作の映画)
3.6
『神の地』

 自然と人間の関係、獣と人間の境界、文化の衝突…そして壮大な世界の前では対立も境界も曖昧に溶かされていく…と一応の軸は見えるもののやはり長い。30分ぐらいは削れると思う。綺麗な景色が頭に残るのでとにかく余韻は良いけど、鑑賞中を思い出すとかなり退屈な体感だったので二度見られる気がしない。主人公が目的地に着いたところで時計を見るとまだ1時間しか経ってなくて頭を抱えてしまった。

 時間経過とその諸行無常を示すように景色が変わっていくスマッシュカットの連続は好みだが自然が人間にとって恐ろしく感じられる場面がもう少しあって良い。前半のロードムービー部分は基本的にシーケンス毎に寄るか引くかの両極端だし、寄っているところは「人」を、引くところは「自然」をそれぞれキャプチャーしているだけで、自然が人にとってどういうものか、もう少し判然とする場面があって良い。(ポスターになっている場面の一連のくだりは良かった。)突き放しすぎてるというか、フィックスによる俯瞰的・写真的な画面構成が見ていてあまりにも他人事すぎる。

 1.33:1の画角は当時の写真から着想を得ていることから納得のいく採用。物語全体を俯瞰的に冷淡に追っていくことが「自然の中では様々なことが無化する。」という体感に合っていて良い。淡白すぎるが、ディスコミュニケーションの話としては面白いと思う。コミュニケーションが生まれ得た瞬間がいくつかあるが、やはり上手くいかず冷淡に流れていってしまう。自然の中に人物を収める俯瞰的な撮影がよく機能していると思う。会話の場面で「言葉が分からない」の一点張りで突っぱねていくくだりがいくつもあって気分が悪かった。