銀のしずく

ゴッドランド/GODLANDの銀のしずくのレビュー・感想・評価

ゴッドランド/GODLAND(2022年製作の映画)
3.5
アイスランドの過酷な自然のなかを、牧師が苦労して辺境へと向かう物語だと思っていた。確かに前半はそんな感じで、自然が過酷ながら美しい。
 しかしたどり着いた入植地ではピアノもあるような文化的な生活をしており、女性や子どもたちはどうやって荒れ地を踏破しここへたどり着いたのだろう、と思ったら…!
牧師がクズだった。体力も精神力もコミュ力も弱く、自分のことだけを考えている写真オタク。

 この映画をどう捉えればいいのだろう。アイスランドがデンマークの植民地だったということは、キーワードだろう。牧師は征服者の象徴。被征服者の言語や考えを知ろうともしない。暴力的に征服するわけではないが、追いつめられたら暴力も行使する。村の人々は「征服されざる人々」。牧師を受け入れてやろうとするし助けもするが、お人よしにやられっぱなしなわけではない。
 牧師はブラックジョーク的キャラで、雄大な自然を小さめな画面で描いているのもブラックジョーク的と言えるだろう。最後に流れる歌もブラックジョークか。
 信仰への踏み込みはさほど深くはない。この点はデンマークのドライヤードに遠く及ばない。舞台は魅力的な作品だが、テーマがはっきりせず物足りなさがある。