horahuki

Flux Gourmet(原題)のhorahukiのレビュー・感想・評価

Flux Gourmet(原題)(2022年製作の映画)
4.1
スカトロだってアートなんだ!!

アートを探求してたら顔面にうんこを塗りたくるスカトロに行き着き、更には大腸カメラ施術すらアートにしてしまうトンデモホラー!異色作連発のストリックランド監督の“らしさ”全開!うんこにオナラに…な臭い立つゲテモノ感とオシャレ感の不思議な融合!

料理が発する音を使ってパフォーマンスアートを製作する三人組を通して、芸術家が直面するプロデューサーや仲間たち、その他関係者とのイザコザを風刺的に描いたブラックコメディ。監督の自伝的作品らしいけど、どこまでが自伝なんだろ…流石にスカトロは違うよね…?😅というかmubiで公開してる短編でも美男子に無修正ガチオナニーさせてたし、何というか…最高な監督さんですわね😂

泊まり込みで芸術家を育成する一ヶ月間?のプロジェクトに参加した三人組(エル、ラミナ、ビリー)。演習を繰り返して「芸術」を高めていく中で、フランジャーというエフェクター(初めて聞いた😂)を巡って口出ししてきたプロデューサーとバチバチのバトルを繰り広げる。高圧的で独善的でフェミニストでビーガンな面倒くさい系おばさまエルに反撥する他メンバーとの内紛も次第に加熱化し、会場内の雰囲気は最悪…。そんなカオスな様子を、腹痛持ちで屁こきな書記係ストーンズを通して描いていく。エルがスカトロパフォーマンスするんだけど、実はうんこじゃなくて…っていう根性なしっぷりも性格の悪さが滲み出てる!やるなら本物でやってよ!


以下ネタバレです。スルー推奨です。




過去作『バーバリアン…』の変調のような内容で、キャベツを刺したりスイカを潰したりといった音が、人を殺害する時の音へと変換された『バーバリアン…』での「同じ音が全く違う効果を齎す作用」を料理に当てはめ、ある人にとっては大好物だけど別の人にとってはアナフィラキシーを引き起こす真逆の作用に触れたことがエルの芸術への根源的なもの(自称)となっている。死を笑った罪悪感と一般人とは外れたある種の個的な正しさを混同させ、何かしらの現実に直面した人間の反応についての真逆の作用が齎した悩みこそがトラウマ的に作用し、そこに芸術性を見出した故の活動がパフォーマンスアートとして結実しているように見える。

貞淑な妻の教本のようなエドナメイへの態度を含めた家父長制への嫌悪、ビーガン思想等々への傾倒は時代的には主流へと傾くものであろうけれど、あまりにも極端で先鋭化しすぎるが故に誰からの賛同も得られない。作中で指摘されるような目立ちたい欲求によるものか、それとも純粋な思想によるものか…どちらにしても豚の屠殺、スカトロ、大腸カメラ、ラストと大多数の持つ食のポジティブな側面とは相反するパフォーマンスをエマは徹底している。

タブーを気にしないという旨のストリックランド監督の言葉を考えると、そういった思想を過激にかつ声高に叫び注目されることについて、何ともコメントしづらい思惑が見えてこないこともないけれど、その個人的欲求・思想と外見上(そう見えることも含めて)では見えてこないドス黒い内面の元に生まれてくる個の芸術と、それに何かしらの抑制なり手を加える外部との「ミス」とビリーが呼ぶような意図されないミックスによる総合芸術を本作は比較分析しているように見える。

思想は欲求により上書きされ、それは本人の意識すらも欺いて排出される。屁について何度も心配するエマに少し違和感を覚えたのだけど、何となくその意図は納得できる。人に向かって排出しまくるエマと人知れず隠れた場所で排出するストーンズ。彼にとっての毒を摂取しないことで排出を抑える行為は、彼のライターとしての性質(自らの身体を芸術に差し出したくない)を後押しするものだと思うし、だからこそ偽装された「その人の人生を賭けたもの」をそうだと信じて無批判に摂取して大喜びする。この何者をも神格化しない姿勢は流石のストリックランド監督だと思うし、ある種、そういった偽装する・偽装される関係性の元で芸術は発信・受信されるわけで、そこもまた受信側の大好物・アナフィラキシーの関係性に戻ってくる。そして彼は素晴らしいものとして「書く」のでしょう。

この「実態のない思想」の発信・受信の分析はまさに『ファブリック』『バーガンディ公爵』で、『ファブリック』で没ネタとなったジジイの射精→それが付着して模様となった衣服を「イイ!」と思って買ってしまう客…を本作で翻案して世相を色濃く反映させた上でやってるようにも映る。両作ともに外部からの侵食によるものとして描かれていたけれど、本作の場合はそこに加えて自身の経験とそこから生まれる心的リアクションすらも侵食として深化させ、そのもとに排出されたものが真なる自己だとの認識ですら自身が欺いた虚偽に基づく誤認でしかないのではないか…ということをやろうとしてるように感じた。だから若干似てる『クライムズ・オブ・ザ・フューチャー』のような確固とした自己すらもマヤカシで、誰も神格化しないどころか自己含めた全方位を嘲笑うかのようなスタイルは超好き!そんでその偽物だらけの混乱した状態そのもの、無自覚な「Fabric」状態の気持ち悪さをアートだとしたいんでしょうね。とはいえ、ホラーと言えるかどうかは割と微妙…。スコアは甘めで!
horahuki

horahuki