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真実のマレーネ・ディートリッヒの東京キネマのレビュー・感想・評価

3.0
マレーネ・デートリッヒの孫が作っただけあって、綺麗にまとめています。 イメージ通りというか、むしろ、こういうことにしてもらわないと時代が許さない感があって、もうちょっと人間臭い部分があっても良さそうな気がしましたが、仕方ないですかね。

当時、反ナチ・キャンペーンを自ら勧んでやらなければ、アメリカに居場所はなかったでしょうし、当局にとってみればこれ以上ないグッド・アイコンだった訳ですから、こういった「ナチの国、ドイツ」と「自由の国、アメリカ」という当たり前すぎるプロパガンダが完成した分、むしろ胡散臭い感じが正直してしまいます。 全てナチが悪いで終わり、他のことは一切関係ないっていう理屈ってどうなのよ、と思う訳です。

自ら広告塔になって売った大量の戦時公債は、結局はハンブルクやドレスデンの大虐殺の原資になった訳ですから、本来は矛盾を感じていた筈だろうとは思うのですが、そういったニュアンスは全くありませんし、というより、彼女の人生からはナチに対する憎しみの直接的な原因も良く分からないということもあって、なぜそこまで必死に慰問をやり続けたのかも良く分かりません。

まあ、それにしても、マレーネ・デートリッヒは伝説の人ですし、彼女の個性に並ぶスターはその後居なかったことを考えれば否定すべきことは何一つありませんし、むしろ、こういった時代のスターに成らざるを得なかった状況に同情さえします。

「リリー・マルレーン」の話に関しても、知った当時は熱狂した覚えがありますが、時間が経つにつれ、どうも素直に受け取れない事実関係が見えてくるということもありまして(だって、ドイツ兵士もイギリス兵士も同じく厭戦気分になったなんて美談は、後付けで幾らでも盛れる話ですしねえ・・・)、大きなシンパシーがあった分、むしろ逆のベクトルになってしまう悲しさをひしひしと感じる次第です。
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