ふじこ

巣のふじこのネタバレレビュー・内容・結末

(2017年製作の映画)
3.2

このレビューはネタバレを含みます

なんの話だ…?ってなりそうだけれども、政府の住宅援助の為に養子を貰って、後で養子縁組を解除すると言う一応合法な汚い技を使って新しいアパートを購入したい夫婦とその一人娘のところに、男の子がやってくる。
女の子は数ヶ月待ちで空きがなく、仕方なく引き取ってきた男の子だった。この子を引き取る事でポイント?を貯めて、優先的に援助を貰って広いアパートへ引っ越すつもりのようだった。なぜならもう一人妊娠しており、実子が生まれる予定だから。

少し行儀が悪い感じもするけれど先立ってすぐに謝れる子ではある。でも全く知らない小学校中高年くらいの男の子。
自室に鍵を締めて娘と2人で出掛けたはずが帰宅すると鍵が開いている。そして異常に実子の娘を可愛がろうとする。
無理矢理抱き締められている娘を引き剥がして、ママと呼ばないでと扉を閉める。
それを気味が悪く思った妻は夫にやっぱり養子なんてやめましょうと言い出す。夫はアパートはどうするんだ、と言いながら君の好きにしたらいいと投げ出してしまう。

その夜、部屋に閉じこもっていた養子が起き出して水を飲み、台所の包丁を眺めた後、寝静まった両親と妹のいる部屋へ行き、母親のお腹に耳をあてるところで終わり。

いや~、不気味な雰囲気でかつ、なんだか哀れな感じがしてよいですね となった。

わたしは養子界隈には全く詳しくないけれど、虐待を受けたり精神的な問題があって施設にいる子供たちが大人とどう関わるのかを扱ったノンフィクションは何冊も読んだ事がある。
ある子供は自分が気に入って貰えるかを気にして、気にしすぎて、期待しすぎて本番で失敗してしまったり、或いは目の前の大人は自分の事をどれだけ受け入れてくれるのか、どれほどの事をしたら見捨てられてしまうのか、そのラインが知りたくて酷い事を繰り返す。どれだけ酷い自分でも受け入れてくれるんだろうか?どれだけ酷い自分だったら捨てられるんだろう、と言う期待と、期待しすぎないようにする心の防御反応と。これ以上傷つきたくはないから。でもそれでも必要とされたいから。

この劇中に登場する男の子は多分、必要とされた過ぎて、その家で最も大事にされている者へマウントを取って優位性を示したがる子だったのかも。
親に放置されたり興味を持たれなかったりする子が親や別の大人にする反応に似ている気がする。
自分の方がどれだけ優れているか、自分を一番に置く事でどれほどのメリットがあるのかを示したがる。
総じて"試し行動"と呼ばれるものの一つなんだと思うけれども。

本編ではこの男の子がどのような存在であるかの詳細は全然出てこないので(頭は悪くなさそう)全部推察だけれども、自業自得でしかないこの両親がどんな結末を迎えるのかなぁ…って不穏な空気に全振りされている。
欲しい物の為に他人の傷ついた子供の心はどうでも良い、と思える人間性であるから同情心も湧かないけれど、もしこの男の子がこのお腹の子が居なければここに居ても良いんじゃないか とまで思い詰めてしまったのだとしたら苦しいなぁと思う。
韓国はソウルに家を持つのが一大ステータスらしいけれど、そういうのが関係しているのかなぁ。
ふじこ

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