ヨーテボリ映画祭にて。

治療法が確立されていないIPF(特発性肺線維症=Idiopathic Pulmonary Fibrosis)を患ったエレーヌの決断のドラマ。

ギャスパー・ウリエル生前最後から2番目の映画で、姿が登場する最後の映画(最後の出演作は声の出演をした「Coma(ベルトラン・ボネロ監督)」)だった。
エンドクレジットに「For Gaspard」あり。

優しく思慮深い夫マチューがいながらも、難病を患いその症状に怯えて生活しているエレーヌが、ある日マチューの反対を押しきってノルウェーに向かう。

人生の最後に寄り添いたいとまで言ってくれる愛する夫がいながら、そこから離れたい気持ちは難病を患った本人にしかわかり得ないかもしれない。
見ていてマチューに同情しっぱなしだった。

何も一人で行かなくてもいいだろうと。
しかも、ブログで田舎での闘病生活から解放された生活を綴っている老人ベントを訪ねると。
なぜ一緒に行くことさえダメなのか、マチューの気持ちがわかりすぎる。
でもそれは私が病を患っていない健康体のマチューの状態と同じだからかもしれない。

エレーヌとベントの会話のなかに「健康な人が病人に向けて言う″頑張れ″が嫌い」という言葉、確かにそうかも。あまり軽々しく頑張れとか勇敢だとか言うのは考えもの。個々の受け止め方や精神状態があるわけだし。エレーヌとベントの場合、頑張れも何も死の恐怖と隣り合わせでもう頑張れない状態で、最後の過ごし方を考えてるぐらいだから。

二人でなんとか最後を過ごす、一緒に病と闘う、二人三脚で乗り越えるとか、そういうよくある難病ドラマとはまた違う。
自身の命の終わりが見えてきた状態でのエレーヌの選択は、誰にも媚びず、綺麗事もなく、マチューから見るとその決断を受け入れる以外無しという感じで彼の視点で見ても複雑な気持ちに。愛しているが愛だけではどうにもならない、無力さ。

ギャスバー・ウリエルとヴィッキー・クリープスの演技にやられる。エレーヌの思いもわかるが、最後まで添い遂げる覚悟が出来てるマチューの気持ちももう少し汲んでくれてもいいんじゃないの？という思いが抜けなかった。

• #難病+疾患関連映画_みむさん