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コヴェナント/約束の救出のMrOwlのレビュー・感想・評価

コヴェナント/約束の救出(2023年製作の映画)
4.1
ガイ・リッチー脚本・監督でジェイク・ギレンホール主演ときたら見るしかない、という思いで楽しみにしていました。ガイ・リッチー監督はガイ・リッチー監督は、スナッチ、リボルバー、コードネーム U.N.C.L.E.、ジェントルメン、キャッシュトラック、オペレーション・フォーチュンなど相手の裏を読んだり、策を練ったりと捻りの加わったアウトロー系作品が秀逸ですが、本作はアフガニスタンで任務に就いた米軍と現地の通訳を務めた人物との絆を描いた作品になっています。アフガニスタンと米軍を描いた映画は多いですが、雰囲気は実話に基づいて制作されたローン・サバイバーに似ていました。部隊の練度は米軍の方が上ですが、タリバンはとにかく戦士(兵士)の数が多く、次々と襲来するところが怖いですね。更に軍服を着ているわけではないので、地元の人なのか、タリバンの戦士なのか、タリバンの協力者なのかが判別することがとても難しいところも厄介です。武器や爆弾を隠している工場の捜索をジェイク・ギレンホール演じるジョン・キンリー曹長率いる部隊が行うのですが、多数のタリバン兵に襲撃され、部下を失い、自身も重症を負います。そんな曹長を通訳のアーメッド(ダール・サリム)が100キロの道のりを基地まで連れ帰ります。アーメッドには米軍へ協力することで、妻と生まれてくる子ともども米国へのビザを取得し、移住するという希望がありました。そのためにキンリー曹長を命がけで救うのですが、逆にタリバンからは目の敵にされて狙われるようになり、身を隠します。帰国し治療を受けたキンリー曹長が数週間の昏睡状態から目覚めると、命の恩人であるアーメッドの状況を確認しますが、身を隠していると知り、アーメッドのために伝手を使ってアフガニスタンへ救出に向かいます。戦闘シーンの迫力、基地までの道のり、そして再びアーメッドの元へ向かったキンリー曹長とアーメッドの脱出作戦、どれも緊迫感があり、見応えがあって良かったです。ジェイク・ギレンホールは流石でした。今回も義に篤い曹長を見事に演じてくれました。またサウスポーとかアンビュランスとか観たくなりますね笑。
ちなみに、ガイ・リッチー監督は、先述のアウトロー系作品の他に、ロバート・ダウニーJr.主演のシャーロックホームズ2作やキング・アーサー、アラジンなどのスケールの大きい作品も撮っていたりします。流石の手腕ですね。本作がなぜ「コヴェナント」というタイトルなのかは、エンドロールで明かされます。監督の想いも伝わるエンドロールでした。
また、度々映画の題材となるアフガニスタンですが、ザックリとその激動の歴史を補足情報として以下に。地理的には西側はイラン、南と東側はパキスタンと国境を接しています。北側はトルクメニスタン、ウズベキスタン、タジキスタンと接しています。いわゆる、中東の国の一つです。多民族国家で、周辺国と民族やイスラム教宗派でつながりが深いパシュトゥン人、ウズベク人、タジク人、ハザラ人などが暮らしています。近代/第二次世界大戦頃はザーヒル・シャー国王の統治下で、英領インドとソ連、中華民国に挟まれた中央アジアにおける緩衝国家として、日本やドイツ、イタリアや満洲国などからなる枢軸国、イギリスやアメリカ、ソ連と中華民国などからなる連合国の、どちらにもつかない中立国として1945年9月の終戦まで機能していました。1973年のクーデターでアフガニスタンは王政が廃止され共和制となります。1978年、2度目のクーデターにより、初めて社会主義国家になります。1980年代には社会主義政権とそれを支援するソビエト連邦軍と、ムジャーヒディーンの反乱軍とのアフガニスタン紛争 (1978年-1989年)が勃発。社会主義政権は世俗化を進めましたが、イスラム主義のムジャーヒディーンが蜂起したことによる紛争です。社会主義政権の後ろ盾はソビエト連邦のため、反共側の米国は反共を名目としたサイクロン作戦によりムジャーヒディーンを資金援助して後押ししていました。ランボー怒りのアフガン、はこの頃の対ソビエトとの戦いが題材です。政治的不安定さの中、ソビエト連邦によるアフガニスタン侵攻が1979年に起き、1989年にソ連軍が撤退(ゴルバチョフ大統領)。アフガニスタン国内では社会主義政権側とイスラム主義のムジャーヒディーンとの紛争が継続。1991年にソビエト連邦が解体され、社会主義政権側は後ろ盾を失います。イスラム原理主義のタリバンの支配も広がり、アルカイダも加わってくるなど混沌とした内戦が続いている国がアフガニスタンです。2021年には米軍も撤退となり、タリバンが再び全土を支配することになったのは記憶に新しい出来事で、この時に米軍に協力していた現地の方々の境遇の過酷さが作品のベースになっています。
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