Jun潤

コヴェナント/約束の救出のJun潤のレビュー・感想・評価

コヴェナント/約束の救出(2023年製作の映画)
3.9
2024.02.24

ガイ・リッチー監督×ジェイク・ギレンホール主演作品。
必殺・ライブ遠征中に映画館in名古屋。

2001年のアメリカ同時多発テロ以降、米軍はアフガニスタンに兵士を投入し、タリバンの武器や爆弾の隠し場所を探していており、その際に通訳として、アメリカでのビザ発行を条件にアフガンを雇っていた。
ジョン・キンリー曹長が率いる部隊では、タリバンの爆弾によって通訳を喪っていたため、新たな通訳としてアーメッドを雇う。
アーメッドを通して得た情報から爆弾製造工場を突き止め、急襲を実行するも大量に投入されたタリバン兵によって、キンリーとアーメッド以外の全員が殺されてしまう。
キンリーとアーメッドはタリバンの追手から逃げるために山の中を駆けるが、ついにタリバンの凶弾にキンリーは撃たれてしまう。
瀕死の重症を負ったキンリーを、アーメッドはタリバンを嫌うアフガンの協力を得ながら、米軍基地まで送り届けることに成功する。
しかし、ロサンゼルスで意識を取り戻したキンリーを待ち受けていたのは、自分の命を救ってくれたアーメッドにビザが発行されていないどころか、タリバン兵に追われる身となっていたという事実だった。
キンリーは、アーメッドに受けた恩に報いるため、再びアフガニスタンの地に降り立つ。

俺たちの!ガイ・リッチーが!帰ってきた!!
前作『オペレーション・フォーチュン』で受けた不満はどこへやら、『アラジン』『ジェントルマン』『キャッシュトラック』を思い出すような、迫力の映像と重厚な人間ドラマ、そして緊迫のサバイバルアクションを観せてくれました。

やはり最初の山場は爆弾工場での戦闘シーンでしょうか。
立体的な舞台構成によって、観ている側からしても、誰がどこにいてどのように攻撃しているかが俯瞰して分かりつつハラハラさせる展開。
さらには序盤の些細なやりとりだけでその親密さが伝わってきて、もっとチームの活躍が見たい!と思っていた矢先の全員死亡。
そして遺されたキンリーとアーメッドは、違う国で育ち違う文化圏で暮らしてきただけでなく、キンリーにとってはタリバンと同じアフガンで、アーメッドにとってキンリーは雇い主でしかない上にタリバンからは裏切り者呼ばわりをされてしまうという、日常からは考えられないほどの凸凹タッグ。
そんな彼らが凹凸とした山間部を駆け巡っていく構図が、作品の世界に没入させるには十分過ぎるほどの魅力を放っていました。

そしてそんな迫力の場面をどんでん返しして、立体的な舞台構成を反転するキンリーの視点とFPSさながらのどこから敵が追ってくるか分からないアーメッドの視点との切り替わり。
こうした作品のメリハリの付け方はなかなかない体験でした。

終盤は熱量マックス。
利害ではない、家族を犠牲にしてでも恩義に報いるために軍人としてのスキルや経験ではなくアフガンとの交渉でアーメッドを探すキンリー。
そして家族との安息の暮らしを手にするために、軍人顔負けの戦闘力で生き抜いていくアーメッド。
再会した2人がタリバンと戦闘を開始し、絶体絶命の危機に陥るも、分かってはいても緊張と興奮を禁じ得ないAC-130の登場。
どうしても胡散臭いイメージを拭えないジェイク・ギレンホールの、諦めが貼り付いた表情がまた良すぎましたね。

キンリーも生きて帰ってこれたし、アーメッドも無事アメリカに移住できたし、ハッピーエンドだーと思っていたら、テロップで現実を見せつけ苦味のある終わり方にしてくるのもまた、題材が題材だけに当然のことかもしれませんが、救われない多数の犠牲の中にも、今作のような救われたアフガンもいたんじゃないかと思える、思わせて欲しい作品でした。
Jun潤

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