針

コヴェナント/約束の救出の針のレビュー・感想・評価

コヴェナント/約束の救出(2023年製作の映画)
3.8
アフガニスタンでの戦闘行動中に協力してもらった現地の通訳には国外脱出用のビザを与えるという、現実のアメリカがほとんど果たさなかった約束を果たしにいくというお話。

2001年以降のアフガニスタンにおけるアメリカの活動には意思疎通のために通訳の存在が欠かせませんでしたが、米軍に協力した彼らは裏切り者として現地では孤立し、タリバンの襲撃で家族もろとも命を落としたり逃亡生活を余儀なくされたりした人が多かったようです(現在進行形の問題でもあります)。これはそんな現実を題材にした戦争映画。

正直エモーショナルを強調しすぎかなーというのはあって、それでむりくり寄り切ろうとしてる感じはありました。
ただそれと同時に、不誠実な現実に対する猛烈な憤りと祈りという点ではかなり胸打たれたところもあって、自分は嫌いじゃなかったです。もしかしたらこれぐらい執拗にやらんと伝わらんでしょう! という想いもあるのかもしれないですね……

あとは戦闘シーンがけっこう硬質で泥臭い。歩兵同士の何でもありの酷な戦闘にかなりハラハラ感があっていいなと思いました。特にズルズル斜面を転げ落ちたあとの谷間のシークエンス。
おおむね局所的な戦闘しか描かれないんだけど、その中で人としての道義を問いかける物語がおのずからアメリカの戦争の大義に疑問符を突きつける物語にもなっていてそこもええなーと。
そもそも通訳を買って出た人たちがこうした苦境に陥ってるのはひとえにアメリカの戦争政策の結果なわけで、侵攻されたことで生まれてしまった同胞同士の仲間割れでもあると考えると自分もラストでちょっと考えざるを得なかったです……。
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