IMAO

コヴェナント/約束の救出のIMAOのネタバレレビュー・内容・結末

コヴェナント/約束の救出(2023年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

よく出来た映画だと思います。構成もしっかりしているし、伝えたいこともわかりやすい。でも年のせいか、やたらと人が死ぬシーンに敏感になっていて、タリバンにも家族いたんだよな、とか色々考えてしまいました。あくまでもアメリカから見た戦争を描いている。タリバンはあくまで悪役でしかないのは、かつての西部劇と同じ。でもジョン・フォードだって西部劇をたくさん撮るうちに変化していったのは、映画好きなら誰もが知るところだろう。そういう意味では、この映画は時代から逆行しているような印象さえある。
それでも良かったシーンはたくさんある。ギンレイホールが命を救ってくれた通訳(ダール・サリム)を助けに行くのだが、久しぶりに会った二人はしばらく見つめ合う。いきなり抱き合ったりしない。映画は違うけど川島雄三の『洲崎パラダイス 赤信号』でも、出て行った旦那に数年ぶりに再会した女房(轟夕起子)はいきなりその旦那と抱き合わない。彼女は一旦部屋に引きこもってから、また旦那に声をかける。ああいうシーンなんかを連想した。良い演出は、一旦「引く」ことを忘れない。
ギンレイホールの「あいつは俺の心に鍵をかけた」というセリフも好きだ。人は他人を傷つけたり、何か悪いことをしたと思った時こそ、どう行動するのか?それこそがこの映画のテーマだ。僕ならどうするだろう?命を助けてくれた人を命懸けで助けに行くだろうか?自分にも家族がいるのに…そういう意味では確かに称賛される物語だし、事実に基づいているから説得力もある。
でも…とも思う。戦争は何も生み出さない。憎しみが増殖されてゆく。僕たち日本人だって、遠くの戦争の様に思っているが、決して部外者ではない。タリバンたちが乗っている車は、TOYOTAやNISSANの車だ。丈夫で故障の少ない日本の中古車は海外でよく売れる。かつては日本で家族や荷物を平和に運んでいたその車も、戦地で使われる。この車を作った人たちだって、まさか自分たちが作った車が戦争で使われるとは思ってもいなかっただろう。でも戦争とはそういうことで、何の関係のない人たちが憎しみの渦中に巻き込まれてゆくことだ。そのことを考えるキッカケになるのなら、この映画にも救いがある。

技術的にはドローンの使い方がとても上手くて、特に戦闘シーンで俯瞰的に捉えた画作りがとてもわかりやすかった。
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