三隅炎雄

遊侠三代の三隅炎雄のレビュー・感想・評価

遊侠三代(1966年製作の映画)
4.6
村山新治が「夜の青春」シリーズの間に同じ梅宮辰夫主演で撮った着流し任侠映画の異色傑作。自らの掟に縛られて無惨に壊滅していくやくざ集団の姿を、徹底した反ヒロイズム反任侠の思想で描く。血が絶えるまでの愚かな殺し合いのすえ、深手を負った主人公が最期の救済を求めて教会に向かう、そんな特異な作りの映画だ。三木稔の劇伴は現代音楽そのもので、抽象的なその調べは感傷を拒絶し、映画全体を冷たい死の観念で包み込んで異様という他ない。
村山・梅宮・三木の組み合わせで、この反任侠映画志向を更に冷たく硬質な文体で推し進めたのが、同年の異形作『男度胸で勝負する』ということになる。そこでは題名が表す侠客たちの威勢のよい思想が、帝国主義に関係付けられ厳しく批判される。
そしてこれら着流し任侠映画異色の試みは「夜の青春」シリーズの脚本を担当した成沢昌茂が梅宮で撮った翌年の『花札渡世』へと引き継がれていく。
梅宮辰夫の救済は叶ったのか。教会は、村山新治後年の傑作『日本悪党伝』では、主人公若山富三郎の額に刻まれた十字架の刺青として形を変えて再登場し、そこでは何と若山は鬼神となって悪行の限りを尽くすのであった。
三隅炎雄

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