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アートカレッジ 1994のKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

アートカレッジ 1994(2023年製作の映画)
2.5
[中国、芸術と未来に惑う青年たちの肖像] 50点

2023年ベルリン映画祭コンペ部門選出作品。リウ・ジエン長編三作目。1990年代初頭の中国南方藝術學院で学ぶ学生たちにスポットを当てた青春の肖像。この頃は改革によって中国が欧米諸国に開放された時期らしく、大学生たちは大人への第一歩を自国の文化と流入した西欧文化の間でどこに置くか悩んでいる。そんな中で二人の主人公、油絵を専攻するジーフェイとそのルームメイトで中国絵画を専攻するシャオジュンは、様々なことについて語り合う。芸術とはなにか、誰が何が芸術を芸術たらしめるのか、偉大になるにはどうすべきか、といった疑問は問い続けても答えは出せず頭に残り続ける。アートあとして展示された汚いベッドやよく分からん前衛パフォーマンスについて、芸術を学ぶ彼らですらそれが芸術なのかよく分かっておらず、全てがアートになるなら別に大学に行く必要ないんじゃね?→そんなことはない、みたいな会話があったのが興味深い。やがて、二人の大学生活は、別棟で生活する音楽科の女生徒たちと交わる。ソプラノ歌手のホンとピアノ科のリリだ。彼女たちもまた、それぞれの視点から未来を考えながら、恋愛について考える。堂々巡りするある種の詭弁は、リウ・ジエン的なシンプルな背景の前で語られるため、なんだかスノッブ紙芝居でも見ているような気分になる。芸術の話をしているのに芸術が中心に来ないスカシっぷりは興味深いが、特に新しい洞察ももたらすことなく、映画そのものの芸術的創造性も欠けてしまっている(その点でミイラ取りがミイラになったような自己批評性はあるのかもしれない)。前作『ハブ・ア・ナイス・デイ』は77分だったが、彼のオフビートな作風だとそれでも長いくらいなので、本作品の118分は完全に時間を持て余していた。残念。2019年ヴェネツィア映画祭コンペ部門に選出されたヨンファン『チェリー・レイン7番地』も変態スノッブなアニメ映画だったが、中国のアート系アニメ映画はそういう傾向になりがちなのか?
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