はんそく負け

夜明けのすべてのはんそく負けのレビュー・感想・評価

夜明けのすべて(2024年製作の映画)
3.0
上白石萌音が松村北斗の自宅を訪れると、自分で髪を切ろうと青いケープを纏った松村が顔を出す。「私切ろっか?」と上白石が提案するときカメラはふいに松村邸に入る。この瞬間のとぼけたような空気感。対照的に、松村がキッチンで何かをしていてピンポンが鳴って、出ると元同僚の芋生悠が立っている。ひと言ふた言会話して、あることが伝えられて、瞬間カメラが芋生の立つ外に出た際の冷たい感触。屋内/屋外を用いた構図/逆構図の新鮮な驚きに胸を打たれる。
しかし、やはりロマンチックが過ぎると思う。松村が初めて自転車を使うときの、「さぁ〜こっから自転車乗りますよ!」と言わんばかりの光の差し方と、遠くまで伸びる道。ロマンチックすぎやしませんか。あざとい。言外に映画といえば自転車の運動、というような押し付けがましさすら感じるのは流石に言いすぎだろうか。あと中小、というより零細企業に夢を見過ぎではないか。そこに身を置く人間として、実際こんな余裕あるとこないでしょ、みたいなところはずっと引っかかる。実際はみんな金にうるさい。死ぬほど。