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夜明けのすべてのryoのレビュー・感想・評価

夜明けのすべて(2024年製作の映画)
5.0
帰りのエレベーターでお姉さんが「いつも周りの男がデカいから気づかなかったけど北斗あんなにデカいんだね」と言っていて「マジそうっすよね」と心で答えた。素だから気づく良さ。あらすじを読んだ段階ではこんなん映画になるのかよとしか思えなかったが、見た今となってはこれを映画といわずして何を映画というのかと改心。呆れるほど地味なのにどうしてこうも良いのか。おそらくいい意味での無色さにある。あんなに俳優どうしをエロく(もちろん単に性的という意味ではなく、生々しい身体性を帯びている、の意)演出する作家が、それすらやめて、芯から向き合う対話者どうしとして演出するというのだから、三宅唱はもはや作家であることすら脱したように見える。才人にしか許されぬ芸当。オトナだぜ……。青山真治にとっての『東京公園』に似たメルクマールだと思う。俳優に負けず劣らずいちいち美しい実景にも感動した。だから北斗が自転車で横断歩道を渡るロングに泣く。風景のなかにポツンとある人間。あんまり使いたくないけどこういうのは「世界」と呼んでいいはず(実は三宅最長)。その広い世界で、時々集まってはバラバラに散って、また集まるかもしれない可能性を抱えて生きてゆく。
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