オクターヴ

夜明けのすべてのオクターヴのレビュー・感想・評価

夜明けのすべて(2024年製作の映画)
4.9
限りなく満点に近い映画。三宅唱監督の凄さは「きみの鳥はうたえる」からリアルタイムで追っていたのでわかってはいたが、今作は代表作になると思う。松村北斗と上白石萌音が本当に素晴らしい。パニック障害とPMSという心の病をそれぞれ持つ二人を中心に描かれていく物語だが、恋愛要素がないのが良かった。いや、あるのかもしれないが露骨には描かれない。現代を描く時に必ず表現される価値観も少なく、現代ではあるが普遍的な人間関係、とにかく弱くて繊細な人達がいて、ともに助け合っていく様が心を打つ。登場人物に嫌な人間がほとんどいない。あのヨガの仲間も現代を代表して表現されているだけで悪い人間ではない。あと、これが映画だ!という決めにいくショットもなく、描きすぎない。だが察するし、わかる。流れるような画面と癒しの音楽がたまらなかった。素晴らしい映画だった。