魑魅魍魎

夜明けのすべての魑魅魍魎のレビュー・感想・評価

夜明けのすべて(2024年製作の映画)
4.4
 「いいモノ観たなぁ」というのが率直な感想で、そこには確かに藤沢さんと山添くんがいたと思うのですが、これ人によっては上白石さんと松村くんの無駄遣いと捉える人も一定数いるのではないかと要らぬ心配をしてしまいそうです。あらすじにも書いてあるから断言しますけど、恋愛要素は潔いほどありません。大事件が起きる訳でもなく淡々と物語が進行してささやかな結末を迎える訳です。
 でも観終わった後に春の日差しを一身に受けたような充足感に包まれること請け合いですし、私個人としても「ダメ人間だから人と関わらず生きていこう」でなく「不完全だからこそ助け合いながら生きていきたい」と思えるようになった事が凄く良かったです。荒唐無稽なフィクションではなく手を伸ばせばそこにありそうな理想の人間関係を想い描くことができました。
 私自身三ヶ月入院して脳神経内科のお世話になった事がありますので、自分自身がコントロール出来ない状況に陥りましたし、いつまた戻るかも知れないし、誰にでも起こりうる事だと思っています。それを踏まえてそんな状況になってしまっている誰かに対して、助けられる事は手を差し伸べて無理な事は優しく見守ることができれば、それがいわゆる「優しい世界」を体現する事になるのではないかという気がしてならないです。
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