Breminger

夜明けのすべてのBremingerのレビュー・感想・評価

夜明けのすべて(2024年製作の映画)
4.5
心の病を抱えた同僚の2人の日常のお話。特典はフィルムしおりでした。

宣伝文にもあった恋愛関係でも友情でもない独特だけど朗らかな距離感が絶妙に描かれており、「ケイコ 目を澄ませて」の三宅監督の手腕がこれでもかと発揮された作品でした。

出会った当初はいがみ合っていた(というか藤沢さんがPMSで苛立っていた)2人が、お互いの症状を話し合ってわかり合っていく流れに優しさが滲み出ていました。
パニック障害が起こってしまうから美容院に行けない山添くんの髪を切ろうとして、切りすぎちゃう藤沢さんがアワアワしてて、それを見てもう笑うしかない山添くんの姿がこれまた微笑ましかったです。
藤沢さんがイライラしだしたなという事を即座に勘付いて、外に連れ出して車を磨いておいて〜と1人で声を出せる状況に連れていったシーンがとても良くて、あの場で連れ出していなかったら中学生の2人に怒りをぶつけていたと思いますし、そうなると会社での立場も危うくなる、山添くんの反応速度はお見事なもので、2人になってからはフフッと笑える場面もあったのがまた良かったです。

2人で互いの症状を茶化すまでいかずとも、こういう状況で発作が起こったらどうしてたの?とかこの症状になって良かったことってあった?と距離感が近くなったからこそ色々聞けあっていたシーンはかなり印象的でした。

会社の人たちが優しいというのが今作の良いところで、どうしても怒りが爆発してしまったら放置したりなぁなぁで対応してしまいそうなもんなんですが、しっかりと宥めて落ち着かせて、本人が罪悪感をなるべく感じさせないようにするのが見ていてとれて素敵だなと思いました。

この手の作品はどうしても感動に強引に持って行きがちなんですが、2人の日々を余す事なく描くことによって自然に感動へと連れていってくれてるのがまた素晴らしく、2人それぞれの前進と転機、どちらも前向きに次の事を考えており、その姿には見惚れっぱなしでした。
なんて事ない会話を大袈裟に映さず、その一コマ一コマを切り取った演出も素敵で、全てのシーンにうっとりしてしまいました。

役者陣の何気ない人たちの様子がこれでもかってくらい表現されていて、観ているこちら側も思わず共感したくなるシーンばかりでした。渋川さんがこれまた優しい上司として出ていたのがいつもの暴れっぷりとのギャップが感じられて思わぬ収穫でした、

優しい日向の中、会社でのんびりと過ごす社員たちの姿をエンドロールで綴ってくれるので、とても微笑ましかったです。
Breminger

Breminger