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夜明けのすべてのせっのレビュー・感想・評価

夜明けのすべて(2024年製作の映画)
4.3

同じ会社で働く、PMSによって月に一度必ず自分ではどうしようもできないだるさと、イライラに襲われる藤沢さんとパニック障害を抱える山添くんが、お互いに支え合いながら少しずつ前に進んでいく話。

前進めと強く背中を押してきたりしないし、人生の意味を仰ぐようなことも無く、主人公二人の少しの迎合を描くずっと優しい世界の話。特段なにかか前進した訳では無いけど、見たあと何となく明日が来るのが楽しみになり、明日は仕事いつもよりちょっとだけ頑張れるような気分になれる映画。

藤沢さんも山添くんも自分のかかえる症状を改善させてなにか前進したい2人。でもこの映画の中で、目標とか夢とか仕事のやりがいとか未来を感じる要素はほぼない。例えば、社員が学生のインタビューに答えるシーン、今年の目標は皆とりあえず直近の思いついたことだし、会社の良いところも特になさそう。藤沢さんの転職活動の面接練習も志望動機や自己アピールは描かれなくて、自分のやってきたことを伝えるだけ。

ただ時の流れと周囲の環境に身を任せている人達。本当にそれで良いんだなって。現代人って前に前に進もうとしすぎなんだなって。山添くんも、最初は人生が狭まったようだったけど、実は山添くんの世界は元の会社の時より広がってる。自己啓発本を捨て街に出よと、私の頭の中の寺山修司が叫んでいた(笑)

私が一番好きだったシーンは、山添くんの彼女と藤沢さんが少し話すシーン。まず藤沢さんの歩きながらミカンも最高なんだが、お守りを1人の男の家に届けに行くなんてもう色恋沙汰の匂いしかしないのに、実はこの人色んな人にお守り配りまくる人でそれを当たり前のようにできる人っていう一点にまとめ上げてて良かった。

あのシーンがあったから、PMS後に迷惑かけたからお菓子を配ってた藤沢さんの印象がガラッと変わるんよね。
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